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“職場託児所化”で社員全員が子守りをする企業の生産性はどうなっているのか (2018/7/11 瓦版

関連ワード : 働き方改革 労働・雇用 子育て 

子育て問題に“ド真ん中”から切り込んだ企業

職場における子育て問題は、女性活躍推進の文脈でも悩ましいテーマのひとつだろう。休暇制度や社内への託児所設置などで対応する企業も増えてはいるが、まだまだ試行錯誤の域を出ず、本質的な解決策に辿り着いていない印象だ。そんな中、(株)ピアズの“子育て”対応は、ある意味斬新だ。ズバリ、職場全体の“託児所化”。ありそうでなかった同社の育児支援策は、一体どんなものなのか。潜入取材した。

株式会社ピアズ

赤ん坊が職場になじんでいる会社

エントランスを通過すると小さな笑顔が迎えてくれた。同社社員で経営ソリューション事業部HRMチームリーダーの今井春菜氏の一人息子タイガくんだ。とにかく人見知りせず、いろいろな表情で見つめてくるタイガくん。貫禄すら漂わせるその姿は、もはや、社員のように職場にすっかりなじんでいる。

この笑顔だけで職場の空気を和ませ、生産性を上げてしまいます

この笑顔だけで職場の空気を和ませ、生産性を上げてしまいます

それもそのハズ、タイガくん、実は同社全社員に面倒をみてもらっているのだ。託児スペースも一角にあるが、ママである今井さんだけでなく、社員が代わる代わる子守をする。時には業務中の社員のヒザの上にいることもあれば、幹部会議に同席していたりもする。もはや、職場全体が事実上、“託児スペース”として機能しているというわけだ。

子育て支援策として、ベビーシッターサポートや託児所設置&保育士雇用などを導入する企業もある。だが、同社ではあえて、そうした外部活用型でなく、自社内でフォローし合う子育て支援を実践する。社員への負担を強いることにもなるが、その理由について同社専務取締役の吉井雅己氏が解説する。

託児スペースでタイガくんをあやす吉井氏。実は今井氏(左)の旦那様。タイガくんのパパだ

託児スペースでタイガくんをあやす吉井氏。実は今井氏(左)の旦那様。タイガくんのパパだ

「もともと若い会社で、いわゆる子育て問題はなかったのですが、ここへきて出産する社員も出始めた。それが理由で辞める社員もいた。これは非常にもったいないなと。それで離職防止のために何か策はないかと考えた時、子供ができることで働くスタンスが変わるということを認識し、その上で子育てを社員全員で共有しようという考えに至り、導入となりました」。

なぜ社員全員が子守りをすることが可能なのか

狙いはシンプルだ。職場に子連れ出社ママがいる。それはそのまま、やがてそうしたフェーズを迎える社員にとっては将来の自分の姿。決して他人事ではない。その親も、子育てのためだけに出社しているわけではもちろんなく、業務にも取り組む。そうなれば、誰かが、タイガくんの面倒をみる時間が発生する。そこを、手が空いている人が状況を見極めながらサポート。バケツリレーならぬ、“子守りリレー”を各自が自発的に行うことで、同社の職場託児所化が成立する――。

子守り担当は社長とて例外ではない

子守り担当は社長とて例外ではない

それにしても、職場で子育てをすることを受け入れることに抵抗する社員がいても不思議はない。受け入れるにしても、生産性が低下するリスクもゼロではない…。「もちろん、導入に際し、『ホントにやるんですか?』『仕事に影響が出ないでしょうか』という声はありました。ただ、そもそも弊社では利他の精神を大切にしており、助け合うことは当たり前の風土。ですから、実際に子育て出社が始まってからも問題なく回っています」と吉井氏。あくまで感覚値ながら、今井氏の作業効率が子育てで2,3割減となっても、複数の他社員が1人1割増しで生産性をアップすることで、うまく補完できているというからあっぱれだ。

子育てに限らず、多くの場面でこうした<利他の精神>が機能する同社。言うまでもないが、組織力、チーム力はバツグンだ。当然、業績も右肩上がり。なんと創業以来、13期連続で増益を続け、上場を視野に前進を加速させている。

社員も会社も幸せになるハピネス経営の極意

「弊社は社員の幸福をとても重視しています。その前提となる社員満足度の向上にも妥協はしません。例えば、コミュニケーション活性化のための交流経費は無限に設定しています。社員同士が互いを知ることはとても重要と考えているからです。こうしたことを決めるとき、弊社の判断基準は、やるかやらないかではなく、社員が幸福になるかならないか。その2択なんです」

自発的に食材を持ち合って、皆にふるまう朝食サービスもまさに利他の精神そのもの

自発的に食材を持ち合って、皆にふるまう朝食サービスもまさに利他の精神そのもの

社員が幸福になることから逆算し、導入される各制度。それは単に一社員でなく、その家族、両親までをも幸福にするまで徹底されており、みじんのぶれもない。だから社員は、迷うことなく業務に全力を尽くす。懸命に顧客に上質なサービスを提供し続ける。その結果、業績が向上する。まさに幸福の連鎖が生み出す、モチベーションアップと事業拡大の好循環だ。

スパルタ式が苦痛を伴う旧来式の指導法だとすれば、同社のそれは、心地よく自立を促す、まさにハピネス式な育成スタイル。働き方が過渡期を迎え、企業は社員の指導・育成スタイルでも従来型からの脱却が求められている。そうした中、古き良き互助の精神は引き継ぎながら、負の遺産は処分して新しいスタイルを取り入れる同社の組織づくり。人間の本質にまで踏み込んだそのスタンスは、新しい時代の社員指導スタイルの答えの一つといえるかもしれない。

従業員の幸福を担当するタイガくん。すでに実績は十分だ

従業員の幸福を担当するタイガくん。すでに実績は十分だ

言葉を十分に理解できない赤ん坊は、大人以上に敏感に職場の雰囲気を感じ取る。そのタイガくんが、笑顔を絶やさずスクスク育っている事実は、同社のハピネス経営がうまく機能していることを証明するこれ以上ないエビデンスといえるだろう。早くもその潜在力が見込まれ、超青田買いで同社の内定を獲得しているタイガくん。彼が成人した時、同社の事業がどれだけ拡大しているのか。その時のスケールが、そのまま社会におけるハピネス経営の正当な評価となりそうだ。

         ◇

<会社概要>
会社名:株式会社ピアズ
設立:2005年1月
所在地:東京本社=東京都港区西新橋2-9-1PMO西新橋5F
代表者:桑野 隆司
資本金:6,000万円(資本準備金2,500万円)
事業内容:・店舗コンサルティング(組織づくり)
・販売員育成(人づくり)
・人財ソリューション(専門家派遣)
・ITソリューション(能率性向上)
・経営ソリューション(課題解決)
従業員数:正社員77名、協力会社15名、パート2名
URL:https://peers.jp

提供:瓦版

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