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民泊新法施行、住宅宿泊事業とは (2018/6/20 企業法務ナビ

関連ワード : 民泊 法律 観光 

はじめに

昨年6月に公布された住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が今月15日施行されました。2020年の東京オリンピックを控えて外国人観光客の受け皿とするべく法的にも「民泊」が認められることになりました。今回は住宅宿泊事業法に基づき民泊事業を行うための要件などを見ていきます。

鍵

住宅宿泊事業法制定の背景

民泊とは一般に民家の空き部屋などを有料で宿泊させることを言います。近年外国人観光客増加にともないこのような形態の宿泊施設が急速に増加しました。旅行者からも簡易で安価な民泊のニーズは増加の一途をたどっております。しかし一方で公衆衛生の確保や近隣住民とのトラブル防止、無許可営業への対応などの問題点も指摘されてきました。それを受け一定の要件のもとで届出を義務付けるなど民泊を適切に規制することを目的として同法が制定されました。

民泊の定義

住宅宿泊事業法において「民泊」とは、寝具を使用して施設を利用することをいいます(2条2項)。そしてさらに「住宅」とは、家屋であって台所、浴室、便所、洗面設備その他の生活の本拠として使用するために必要なものを備え、かつ現に人が居住しているか、入居者の募集がされているか、随時居住の用に供されている必要があります(2条1項1号、2号)。自宅の空き部屋や、セカンドハウス、別荘、転勤で使用していないが将来居住する予定の空き家などが当たります。長らく使用されておらず、使用の予定がない空き家や一度も使用されたことのない新築マンション等は該当しません。

住宅宿泊事業者とは

住宅宿泊事業とは、宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものを言うとされております(2条3項)。そして住宅宿泊事業すなわち民泊業を行うためには都道府県知事に届出をする必要があります(3条)。届出は民泊業を営む住宅ごとに、商号・名称または氏名と住所、法人である場合はその役員の氏名、住宅の所在地、営業所・事務所の名称と所在地などを届け出ることになります。

住宅宿泊事業者の業務

(1)宿泊者の衛生確保
民泊事業者は宿泊者の衛生確保のために、居室の床面積は1人あたり3.3平方メートル以上を確保し、また清掃と換気を行うことが義務付けられております(5条)。

(2)宿泊者の安全確保
届出住宅について、非常用照明器具、避難経路の表示その他の火災等の災害が生じた場合における宿泊者の安全を確保を図るために必要な措置を講じることが義務付けられます(6条)。

(3)外国人宿泊客の利便性確保
外国人旅行客である宿泊者に対して、設備の使用方法に関する外国語案内、移動のための交通手段に関する外国語案内、その他外国人旅行客に快適性、利便性確保のために必要な措置等が義務付けられます(7条)。

(4)宿泊名簿
民泊事業者は宿泊者名簿を作成しなくてはなりません。本人確認を行った上で、宿泊者の氏名、住所、職業、宿泊日を記載し、宿泊者が外国人である場合にはその国籍と旅券番号を記載し、作成の日から3年間保存することが義務付けられます(8条)

(5)その他の業務
民泊事業者は宿泊者に対し、騒音防止や近隣への悪影響防止などについて説明し、外国人である場合は外国語で説明を行い、また周辺住民からの苦情に対し適切に処理することが義務付けられます(9条、10条)。また各住宅ごとに見やすい場所に標識を設置し(13条)、宿泊させた日数などを定期的に都道府県知事に報告する必要があります(13条)。

都道府県知事による監督

都道府県知事は適正な運営確保のために必要があるときは業務改善命令を出すことができます(15条)。また法令違反などがあった場合には業務停止命令や事業廃止命令を出すことができ(16条)、業務報告を求めたり、立入検査を行うこともできます(17条)。届出に際して虚偽の内容を届出た場合や、都道府県知事による上記命令等に違反した場合は6カ月以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科となる罰則が規定されております(73条1号、2号)。

コメント

これまでの民泊に関しては旅館業法では定義がなされておらず、「簡易宿所営業」(旅館業法2条3項)が一番近いものと考えられておりました。しかし簡易宿所営業として許可を取らずに無許可営業を行う業者も多く、また直接規制する法律も存在しないことからグレーゾーンとされておりました。今回の民泊新法施行により民泊事業が正確に定義され、また旅館業のような「許可」ではなく「届出」でよいとされました。法律の規制のもとで適切に運営され、旅行者の衛生や安全、近隣への配慮の向上が期待できると言えます。

また民泊に関しては本法だけでなく別途条例を定めている自治体も存在し、条例によって民泊業を行えない地域や日数制限が加重されている地域も存在します。2020年東京五輪に向けて民泊業参入を予定している場合は民泊新法だけでなく、当該地域の条例などにも留意することが重要といえるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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