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ギャンブル依存症になりたくないあなたへ (2017/2/4 JIJICO

関連ワード : カジノ 健康 

ギャンブルに依存するってどういうこと?

みなさま、こんにちは。弁護士の菅原直美です。私は、依存症が原因や背景にある刑事事件や民事事件を多く取り扱う弁護士であり、またカウンセラーの資格も有しています。

今日は、IR法などの影響で最近特に注目を集めている「ギャンブル依存症」というものについて、少しみなさまにご紹介した後、どうしたら「ギャンブル依存症にならないのか」を私の知識や経験から一緒に考えてみたいと思います。

カジノ

まず、「ギャンブル依存症」というものは、どのようなものなのでしょうか。ギャンブルを含む行動や薬物などの物質に依存してしまう「依存症」については、世界保健機構で正式な定義付けがなされています。少し長いのですがご紹介しますね。

「精神に作用する化学物質の摂取やある種の快感、高揚感をともなう特定の行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める抑えがたい欲求である渇望が生じ、その刺激を追い求める行動が優位になり、その刺激がないと不快な精神的、身体的症状を生じる、精神的、身体的、行動的な状態のこと」

つまり、「ギャンブル依存症」とは、ギャンブルを繰り返すことで問題(家庭の不和や失職、借金など)が起きているにも関わらず、ギャンブルをしたいという渇望が抑えられずにギャンブルをし続けてしまう、という精神疾患、つまり病気なんです。そして、病気となったご本人が様々な問題に苦しみ続けるだけでなく、借金問題や生活苦などでご家族や友人などを巻き込んでしまい周りも苦しめてしまう、そんな恐ろしさもある病気です。

日本はパチンコや競馬、競輪、宝くじなど、ギャンブルがとても身近な娯楽としてたくさん存在しています。カジノができるかどうかに関係なく、すでに多くの方が「ギャンブル依存症」に苦しんでいらっしゃる、これが今の日本の現状です。

どんな人がなりやすいの?

「ギャンブル依存症」がどんな病気かを知れば、誰でも「なりたくない!」と思われるはず。では、どのような人が「ギャンブル依存症」になりやすいのでしょうか。

どうして人は依存症になるの?というテーマは、精神医療の世界でも長年議論や研究がなされているようですが、一つの有力な仮説をご紹介いたします。

「自己治療仮説」というもので、今から30年以上前にアメリカ合衆国の精神科医によって提唱され、日本では依存症治療の権威である松本俊彦先生が翻訳で紹介されています(『人はなぜ依存症になるのか~自己治療としてのアディクション』(翻訳:松本俊彦医師))。

この仮説は、人がなぜ依存症になるのかについて「それは、その人が辛い出来事や困難な状況などに耐えるために、依存行為を繰り返した結果である」と答えてくれます。つまり、例えば暴力や虐待やそのほか辛い経験をしている方が、それに何とか耐えるため(辛さを忘れさせてくれる)薬物やギャンブルなどをするようになり、それを繰り返すことで依存症になってしまう、ということです。

自分で自分を治療するために使っていた物質や行為で、今度は依存症になってしまう、というご本人にとっては皮肉な結果なのかもしれません。

でも、とにかく辛い状況を耐えることができた、生き延びることができた、という意味では、ギャンブルなどの依存行為はその人にとって「杖」のような良い役割を担っていた、ともいえるわけです(「杖」という言葉は松本俊彦医師が使われている比喩です)。

辛いとき、苦しいとき、誰かを傷つけるなどの外的な攻撃にでるのではなく、自分を傷つけて何とか耐える・・・そんな優しくて穏やかな人が、実は「ギャンブル依存症」になりやすいのかもしれません。

「ギャンブル依存症」にならないために

優しくて穏やかな人が、「ギャンブル依存症」になってしまうと、どうなるのでしょうか。ギャンブルが生活の中心・最重要事項になってしまい、例えば朝からパチンコ屋さんに並び仕事に行かなくなる、ギャンブルをするためのお金を借金する、借金ができなくなると会社のお金を横領する・・・などなど、自分も周りも苦しめ、罪さえ犯すようになってしまいます。

このような「ギャンブル依存症」にならないためには、何ができるのでしょうか。

「依存症」は、ある日突然かかる病気ではなく、進行性の病気です。はじめは趣味程度にたしなむことができていた(社会的使用、と言います)のに、そのうち「ギャンブルをする方がいい結果を得られる」と誤解して、負けても負けてもやり続けるようになります(状況的誤用、といいます)。

「ギャンブル依存症」になった方の多くは、ギャンブルを始めた当初に大勝した経験(1度か2度の経験!)をいつまでも忘れられず、いつかまた大勝できると思ってやり続けてしまう、と語られます。もしあなたが、負けてもやり続け、いつかまた大勝できると思いこんでしまっているなら、「ギャンブル依存症」の一歩手前、という危険な状況かもしれません。

ご紹介したように、ギャンブルは「杖」という側面を持っています。「ギャンブル依存症」になってしまう前に、まずは「杖」で支えている自分は何を耐えているのか、について、落ち着いて考えてみてはいかがでしょうか。何か辛いことがあったのかもしれません、苦しい状況から逃避するためなのかも。ギャンブルに忘れさせてもらっていた「辛さ」や「苦しみ」を知ることが、依存症にならないために必要な「第1歩」です。

直視するのも大変だと思いますが、「依存症」になってしまう方が大変なので、できればこの第1歩を踏み出していただきたいです。

では、第1歩を踏み出したら・・・?その後は、新しい「杖」を探しに行きましょう。

ギャンブル中心になりおざなりにしていた恋人でしょうか?あなたをいつも心配してくれる友達?ペットや自然かもしれません。すぐに見つからなくても、どうか焦らず。あなたらしい毎日を過ごしながら、気長に楽しみながら、「杖」を探すこと。それができる方ならば、きっと「ギャンブル依存症」にはならないと思います。

もっとも、新しい「杖」を見つけることができず、「ギャンブル依存症」になってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。私は絶望する必要はないと思います。

なってしまったら、専門的な治療をする、つまりほかのあらゆる病気と同じです。依存症の治療を行っている精神病院や自助グループによる支援、中間施設でのプログラムで、「ギャンブル依存症」は治療可能です。今はたくさんのクリニックや民間団体がありますので、興味のある方は調べて、実際に行ってみて、ご自身にあう治療を見つけてくださいね。

提供:JIJICO

著者プロフィール
菅原 直美菅原 直美/弁護士
みみなしやま法律事務所
北海道大学法学部、北海道大学大学院法学研究科修士課程、北海道大学法科大学院既習課程修了後、2011年12月に札幌市で弁護士登録。12年5月、奈良弁護士会に登録し、なら法律事務所に所属。15年6月に独立し、「みみなしやま法律事務所」を開所。
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