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オープン5日で参加者88人、地方公務員の“公私”を支援するオンラインサロンとは (2019/1/16 政治山)

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 地方自治体を応援するメディアHOLG.jpを運営し、『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード』を主宰する株式会社ホルグ。地方行政業界では一風変わったアクションを続けるが、1月1日に『地方公務員オンラインサロン』を開設した。その内容や狙いについて、代表取締役の加藤年紀さんに話を聞いた。

株式会社ホルグ代表取締役の加藤年紀さん

株式会社ホルグ代表取締役の加藤年紀さん

『地方公務員オンラインサロン』、ビジネスとして成り立つのか

――地方公務員オンラインサロンとはどのようなものですか。

【加藤】 地方公務員が限定で参加できる、有料のネット上のコミュニティです。参加費として月額1500円をいただいています。

 具体的にできることは、月に2回ほど、ネット上で活躍する市長や公務員の講演を聞くことができたり、交流会に参加することができます。講演では、生駒市の小紫雅史市長や、四條畷市の東修平市長などに登壇してもらう予定です。

 民間企業と連携も進んでいます。たとえば、地方公務員が大手のメディアに執筆ができたり、クラウドファンディングの運営会社に相談ができるようになっています。また、エリアは限られますが、公務員がイベント開催をする場合に、企業のオフィスを無償で紹介してもらうことなども可能です。

――月額1500円という金額は安いですね。ビジネスとして成り立つのでしょうか。

【加藤】 ビジネスとして大きく伸ばそうとはしていませんが、コストは人件費とシステム利用料、登壇費用のみなので、継続はできると思っています。

 確かに、実際に得られるベネフィットを考えると、月額1500円は安いと思っています。普段、勉強会と飲み会に参加したら、交通費なども併せて5000円ほどはかかりますよね。一方、地方公務員オンラインサロンでは、月2回のセミナー交流会がありますし、登壇者も豪華です。2回参加すれば、1回あたりの費用は750円。忙しい時は月に1回イベントに参加するだけでも、費用対効果は十分あると思います。

 一方で、参加費用を抑えることは、運営者として多くのメリットがあります。元を取ろうとコミュニティで力んで無理をする人も少ないと思いますし、忙しい人がいても退会率が抑えられます。気軽に参加できる分、一定数の地方公務員が集まってくれるはずで、これが長い目で見て、力に変わっていくと思います。

――今、地方公務員オンラインサロンには、何人の方が参加しているのでしょうか。

【加藤】 末広がりで縁起が良いなと思っていますが、元旦にオープンして、既に88人が在籍しています(※1月5日時点)。すごくありがたいのは、88人のうち、過去にHOLG.jpで取材した活躍する地方公務員が約40人参加していることです。

 いきなり、『地方公務員オンラインサロン』と言われても怪しいですよね(笑)。にもかかわらず、すぐに参加してくれた方にはとても感謝しかありません。100人を超えてくると、少しずつ怪しさが払しょくされて、もっと多くの地方公務員に参加してもらえると信じています。

「地方公務員を“公私”にわたり支援すること」が世の中を良くする

――最近、オンラインサロンが流行っています。既存のオンラインサロンとの違いはあるのでしょうか。

 流行っているオンラインサロンを分析すると、「著名人と触れあえる」「コミュニティに参加できる」「なにか一緒に行動できる」「セミナーを受けられる」というメリットが複合的に存在しています。

 特に人気の高い堀江貴文さんや西野亮廣さん、落合陽一さんなどのオンラインサロンは、活躍する著名人が主宰していること自体が非常に大きな強みです。だからこそ、彼らから学んだり、彼らと一緒に行動できるというのは大きな価値だと思います。私は著名人ではありませんので、市長さんをはじめ、活躍する公務員や経営者に登壇してもらうことで、それを補っています。

 ちなみに、地方公務員オンラインサロンが既存のサロンと異なるのは、「地方公務員を公私にわたって支援すること」を目指している点です。

 分かりやすいものだと、将来的にはオンラインサロンの参加者が医者や弁護士、保健師、FPなどに無料で相談できるようにしたいです。他にも、昇任試験や昇格試験のためのセミナーなども開催できます。これは会員を地方公務員に限定しているから実現できることです。

ガッツポーズ

――「地方公務員を公私にわたり支援する」というのは珍しい考えですね。

【加藤】 私の全ての活動のゴールは、地方公務員と地方自治体と応援することで、世の中を良くすることです。すごくシンプルな話で、地方公務員が活躍すれば、地方自治体は成果をあげることができます。地方自治体が成果をあげれば、世の中は良くなるはずです。

 当たり前ですけど、地方公務員も生身の人間です。私生活で大きな悩みやストレスを抱えていることもあります。そのストレスは仕事に少なからず影響しますよね。

 だとしたら、負荷を取り除くことは本人にとってはもちろん、世の中にとってもプラスだと思うんです。私のような役所外の人間が、自治体の成果を良くしようというのは、本来、おこがましいことです。結局、直接的に良くできるのは地方公務員だけですから。

企業・NPO・地方公務員の新しい連携で、社会課題は解決する

――なぜ、オンラインサロンを作ろうと思ったのでしょうか。

【加藤】 長崎県の平戸市で行われた、地方公務員向けの勉強会と交流会に参加したことがきっかけです。その時、北海道の名寄市というところから平戸まで、往復20時間、10万円弱の費用をかけた参加者が4人もいたんです。その平戸の勉強会には107人参加したそうですが、驚いたことに、約半分は県外から来ていたんですよね。

 彼らを見た時に、費用・時間・場所の制約にとらわれず、気軽に参加できる場所を作りたいと思いました。むしろ、会に参加できている人が特別だと思ったんです。

 もし、イベントが家の近くで開催されて、お金や時間がかからなければ、参加したい人がたくさんいるんじゃないか…、そう感じました。だって、普通は参加しようとしても、家族からお金とか時間とか、いろいろ突っ込まれるのが当然じゃないですか(笑)。

 ちなみに、先日、サロンの参加者同士で自己紹介文を書いたのですが、「フェイスブックで友達申請して『OK』or『NG』」という項目も設けたんですね。多くの方がOKとしていて、既にフェイスブックで繋がっていたのは、すごく嬉しかったです。「本当に地方公務員の役に立てるのか」と半信半疑で進めてきている中、自信にもなりました。

SNS

――将来的に、地方公務員オンラインサロンは、どのような展開を考えていますか。

【加藤】 参加者が増えていくと、今度は企業やNPOなどとも連携することができます。そういう繋がりから、自治体がお金をかけずに成果を挙げたり、自治体が担う社会課題解決を企業やNPOに分担していくこともできると思います。

 今、企業側からよく受ける相談は、「本音で気軽に話せる地方公務員がいない」ということです。これはある種、しょうがないと思っていて、企業は少なからず行政に商品を買ってほしい面があります。その気配を察知すると、地方公務員は個別企業の相談に乗りづらくなるのが現状です。

 でも、財政的にも行政だけでは立ち行かない時代になり、個人レベルでも官民のつながりが求められるようになってきています。実際、公務員の副業ですら、NPOなどの公益的な活動については、認められるようになりつつあります。

 さらに他方では、企業の社会的価値が見直されてきています。営利とはいえ、大きな税金を払い、雇用を生み出しながら地域を支えている以上、そこには公益性があるはずです。しかも昨今では、企業はただただ売上利益だけを追求するわけではありません。

 この流れが続くと、近い将来、新しい官民の関わり方が求められ、副業なども生まれるはずです。新たな時代の変化の中で、地方公務員オンラインサロンが、官民連携のハブとして機能する可能性は、十分にあると思っています。

コミュニケーション

 まだまだ、手探りな部分もたくさん有りますが、「地方自治体を応援することで世の中を良くする」というゴールを、ブラさないようにしたいです。そのうえで、企業、NPO、自治体問わず、興味のある方に関わっていただきながら、常識にとらわれない活動を進めたいと思っています。

◇地方公務員オンラインサロンについて
1月1日に始まった、地方公務員限定のコミュニティ。活躍する首長や公務員のウェブセミナー・ウェブ交流会に参加可能。メディアへの寄稿や新たな人脈の構築など、活躍する場を広げることが可能。2019年1月5日時点で88人が在籍。

【登壇予定】小紫雅史(生駒市長)/東修平(四條畷市長)/井上純子(北九州市)/今村寛(福岡市)/堤直規(小金井市)/岩波直樹(株式会社ワークハピネス)/脇雅昭(総務省)

【申込み】下記ホームページから
https://camp-fire.jp/projects/view/111482

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