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「女性議員の妊娠」が問いかけること―地方議員が本音で語るWOMAN SHIFT座談会(前編) (2017/9/11 WOMAN SHIFT)

関連ワード : 地方議会 女性 子育て 

 最近、いくつかの報道や討論番組で「女性議員の妊娠」がテーマとして取り上げられました。『職務放棄だ』などの批判の声が挙がることについては、残念ですが受け止めます。しかし、受け止めた上で、その状況を打破できないか、妊娠で放棄せざるを得ない職務があるとしたら、環境を変えて対応できるようにすることはできないのか考えてみたいと思い、党派を超えた若手地方議会議員による座談会で知恵を出し合ってみました。WOMAN SHIFTは女性議員の活動団体ですが、今回は若手男性議員にも参加していただきました。

(※できるだけ多くの党派の若手議員に声をかけましたが、この座談会の内容はあくまで個人の見解を示したもので政党の見解というわけではありません)

●座談会メンバー(五十音順)
おぎの稔・大田区議(日本維新の会)
佐藤篤・墨田区議(自民党)
南雲由子・板橋区議(無所属)
本目さよ・台東区区議(民進党)WOMAN SHIFT代表
松嶋祐一郎・目黒区議(共産党)
企画:たぞえ麻友・目黒区議(都民ファーストの会)WOMAN SHIFT事務局長

座談会の模様

座談会の模様

自分自身の経験もふまえて、女性議員の妊娠についてどう思いますか?

<松嶋祐一郎>
 自分は区議会議員で、妻が参議院議員です。妻が任期中に妊娠・出産しています。妻の場合は切迫早産になってしまって、大事な議決の時に自分の一票を投じることができなかったことを悔やんでいます。

 自分自身のことで言えば、男性の育休の流れもあったけども、ちょうどそのときに宮崎謙介元議員の一悶着で、、、、(一同、苦笑)。先輩にも相談して、自分で決めることだよというアドバイスをもらったうえで、結局育児休業はとりませんでした。

 また、子どもは区内の認可保育園に入れることができませんでした。その時「高収入の議員が保育園に預けるなんてとんでもない」というバッシングを受けました。でも、親の立場や年収にかかわらず、どの子も必要に応じて保育を受ける権利を持っています。いまは、保育園をはじめ、周りのサポートもあってなんとか議員を続けることができています。

<佐藤篤>
 自分はまだ子どもがいないけれど、議員在職中に妻が妊娠することはありうることだなと思っています。「産休・育休」の問題については、休みを取る・取らないという決定の問題だと思っているんです。

 また、今、世間でされている議論(女性議員の妊娠)は、会社員とは何が違うのか、首長(都道府県知事・市区町村長)・国会議員・地方議員では何が違うのか、ごっちゃになっていますよね。そして、女性・男性でも違うと思っているんです。同僚議員にも期中に配偶者が妊娠した方がいて、その方は後援会の活動を控えさせてもらうことでやりくりしていました(議会活動は休んでいない)。産休・育休を取るのか取らないのか、それはまさに議員自らの判断の問題であり、それは住民の皆様が評価する問題で、時代性に応じて、さまざまな選択肢を増やすことが重要なのではないかと思います。

<本目さよ>
 妊娠は自分にも降りかかってくる問題なので、いろいろ考えてはいます。育休は取らないと思うんですが、労働基準法でいう母体と子どもの健康のために産休は取りたいと思ってます。そのあと保育園に入れるのかわからないし、子どもが病気になった時はどうするんだとかも心配…。

 自分がもし妊娠したらどうしようかと議会の先輩議員たちと話すと、快く「なんとかなるよ」と言ってもらえることは嬉しいけれど、制度として整えるような動きにはならないです。休んだ時に文書質問(議場ではなく文書で首長等に質問ができる制度。国やいくつかの自治体ではそういった制度があるが、今回座談会に参加しているメンバーの自治体にはない)ができたらいいなぁと思ってます。

 また、他の自治体の男性議員の話なんですけれど、本会議中に子どものお迎えのために抜けたことがあるとのこと。そんなことができるんだと驚きました!台東区だと聞いたことがないです。
政策実現ができる女性議員を増やすためのWOMAN SHIFTをはじめたきっかけの一つに、2期目の立候補を取り下げた友人がいたこともあるんですが、その1人は1期目に妊娠・出産して保育園に入れていませんでした。

<南雲由子>(生後5カ月のお子さんを連れての参加)
 この子は今年の3月に生まれました。どのように休むか迷ったけれども、公務員と同じように取れるといいと考えて、産前・産後休暇に当たる産前6週間・産後8週間は休みました。

 区議会議員の産休については板橋区の場合、「出産」を理由に議会を欠席することは条例にも書かれていて、過去に前例もありましたが、雇用されているわけではないため産休の期間は決められていません。早く仕事したいという気持ちもあったけれど、若い女性議員を増やすためにもいろいろな前例をつくることが大切だと思って休むことに決めて、5月からは仕事復帰しています。

 産休期間に目一杯、区民として色々経験しようと思っていました。その体験したことを元に、復帰後の6月の議会で産前産後のケアについて一般質問しています。区議会議員の仕事は、区民の代表として区政をチェックするという役割なので、当事者としての経験は無駄ではないと思っています。

<おぎの稔>
 31歳、独身の区議会議員です。今日のメンバーの中で未婚は私だけですよね。

 「早く結婚したほうがいいんじゃないか?」「結婚して一人前だ。」と周囲から言われることが悩みの種ではあります。

 未婚ゆえに子育てや出産の問題に、父親・当事者としての関わりはありませんが、昨年大田区議会でも同僚議員の出産があり、関心はありました。

 今日、唯一の独身議員で、果たしてここに参加していいのか!?と思いますが、勉強させて頂ければと思っています。

 女性議員さんからのご意見で24時間働く議員はイラッとくるということも耳にしたこともありまして、夜中の2時にブログ更新とかする私のことだろうなと(笑)そういう、昼夜、土日なしの政治家の仕事の在り方も、一種の(政治の世界への)参入障壁になってしまっているのかもしれませんね。

<たぞえ麻友>
 今回の座談会を企画しました。私は出馬前に3人子どもを出産して今に至ります。「女性は産んでから出馬すればいいじゃないか」という声もあると聞きますが、そしたら何歳から出馬できるんだ?と思うし、女性議員が増えない要因でもあると感じています。WOMAN SHIFTでもちょうど出産・子育て適齢期の年齢の女性議員が集まっているので、「出産」することで女性が議員を辞めることはあってほしくない、とも思います。

 われわれ議員は制度を整えていくことが仕事だから、今回はそういった手段を考えたいと思っています。

議員の妊娠・出産はどのような点で支障が出るのか?

 付箋に書いて、壁に張り出して議論してみましょう。付箋の内容をまとめると…。

  • 【議会活動】
  • 議会に欠席することで、議決に参加できない。
  • 一般質問の機会を見送らなければならない。
  • 委員会に欠席することで、公の場で報告を聞いたり、意見を伝えたりすることができない。
  • 【政治活動】
  • 後援会活動ができない。
  • 【報酬】
  • 上記のように色々できない状態であるが、報酬は全額支給される。

などなど、様々な意見がでました。

議員の育休

議員の最低限しなくてはいけないことは?~議員の本懐は議決!~

 意見の中で、最も多かったのが「議決」についてでした。議決とは、地方自治法96条によると、国の法律に当たる「条例の制定」、年間のお金の使い方を決める「予算」、前年度どのようにお金をつかったかをチェックする「決算」など、地方自治に関する重要なことについては地方議会で議決をしなければならないと定められています。この議決について話してみました。

本目
議決があるのは年四回の定例会が基本ですね。通年議会をやっているところもありますが。
南雲
産休をとる上で私は直接否定的な意見を言われることはあまりなかったけれど、一度だけ「ちゃんと定例会を避けるようにコントロールして産まないと」と言われたことはあります。
一同
えええ~!!!コントロールするもの!? そう思ってると産めなくなる。
佐藤
緊急の議会もあるからその理屈はおかしい。第一義的には、産休・育休を取ることについて、それは議員としての経験にもなるわけですから、自分に投票してくださった住民の方々に理解されればよいと思います。さらに広く制度として考えれば、欧米諸国で認められているような、代理投票や代理議員制度などを創設することで、その選択肢を増やすことが考えられます。これらは地方自治法の改正が必要となりますから、国会の仕事としてやっていただきたいですね。それを選択するかどうかは議員個人の判断だし、次の選挙で判断されればいい。今は選択肢がないから、選択肢があるということが大事ですよね?
本目
票を入れた人が納得すれば、それでいいのでしょうか?議員として…みんなの代表ですよね?
佐藤
段階があると思うんです。議員は投票してくださった方々の代理人ですから、そのような候補者を選んだということについて理解が得られれば、まずはよいのではないでしょうか。
松嶋
私の妻には、“支持者”を名乗る人から「(期待して)投票したのに、議会を欠席したことは残念だ」とメールが届いたことがあります。すべての支持者がそう言っている訳ではないけれど、言われると本人も一番きつい。女性が出産することは代替が効かないことで、女性ばかりがリスクを背負うのを打破できないのか。社会全体が女性のリスクの理解を進めて制度を変えていかないといけないと思うんです!!
本目
議決ってそもそも何だという話になるんですけど、大きな議決の時にはだいたい結果は見えていると思うんですよね。これを言ったら身もふたもないことは承知の上であえて、問題提起しますが…。
南雲
もちろん一般質問や委員会などで意見を言うことも重要だけれど、そこはどうにか同じ会派の方に代わってもらったりもできる。でも議決は議員の仕事で代わりもいないし、議会に出席できないときでも賛成か反対かは自分も決めていたから代理でも表明できたらと思います。
佐藤
議決だけではなく、民主主義の最も大切な部分は討議でしょう。その最後が議決であるに過ぎません!しかし、最終的には議決に議員の意思が発現される。だからこそ、意識不明の重体などの事態を除いて意思があるんだったら、南雲さんがおっしゃるように議決に関わりたいというのはよくわかります。
松嶋
なぜ自分が議員になったのかということを考えると、議決の場に居ることができなかったのは辛いと、妻も言っていました。
田添
今だったらネットで議決も(技術的には)ポチっとできると思うのだけれど。あ、でも本人確認ができないとか?
本目
そこは指紋認証とか網膜認証とかで本人認証とかでも今はできそうですね。
田添
みなさんのご意見きいていると、やっぱり議員の仕事は「議決」ということでしょう。議員の仕事は定義がなくて、地方自治法では「市町村の議会の議員の定数は、条例で定める」程度の決まりしかない。あとは議会が主語で「普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない」とあるからやはり議決が一番の仕事かなと。
佐藤
技術でクリアできる部分はやっていけばいいと思う。こうやればお互いうまく行くというのを探りたい。
松嶋
寄り添う姿勢をね。

<プチ雑学:国会では…>

本目
国会議員秘書をしていた人から聞いたけど、委員会への代理出席はしょっちゅうだって!
佐藤
国会の委員会には代理として出席させることができる。
本目
本会議も国会議員で休んでる人はいるよ!
田添
そういえば休んでる人いるね。積極的に公表されてないから知られてないけど。

議会の議決ができる条件は?~議場にいないと議決できない~

 議決についてもう少し詳しく話して見たいと思います。国会でも地方議会でも議場にいないと議決することができません(全国の標準会議規則でも第68条 表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができないとなっています)では、今回の座談会テーマで言えば、切迫流産のための入院や母体と子どもの健康のための産休などで欠席しても、議決に加わる仕組みはないのでしょうか。

荻野
代理投票制度とか、代理議員制度とかあるけど、突然出てくる議案だと出てくるものについては(すぐ検討して結論を伝えなければならないから)きついですよね。産休中でも議決だけ出られるとかの方がいいのかな?
南雲
健康ならその日だけ外出することもできるかもしれないけど、体調や時期によってどうしても出られない日もある。でも、外に出ることはできなくても、議案に対して自分の賛否を決めることはできるのかなと思います。
荻野
代理投票ってどこまで進んでるんですか?
佐藤
欧米では進んでいるけど、日本ではできないですね。
荻野
地方自治法の改正が必要?
佐藤
地方自治法ですね。
田添
国政レベルの話になりますね。

補足:諸外国では、話しに上がった代理議員制度、また他にも代理投票制度など、議員が休む場合にその人の代わりに議決する制度があります。
※代理投票制度:欠席する場合、自分の賛否表明を同じ党・会派の議員に委任できる制度。
※代理議員制度:本人が議員としての活動ができない場合に代理で行う人をあらかじめ決めておいたり、次点落選者が代理を勤めるなど、議員本人の代理を立てる制度。

(休んだときの報酬は…?後編へ続く)

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