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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2)◆半島有事へ、緊迫◆  株式会社フィスコ 2017年2月26日

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米中圧力増大、半島有事に緊迫感

昨日、日テレニュースは、日米首脳会談でトランプ大統領が安倍首相に「米本土を射程に収めるミサイル開発を阻止するため、あらゆる手段を取る」と、厳しい姿勢を伝えていたことが明らかになったと報じた。政権幹部は直接攻撃も含まれると認識し、政府内に緊張感が漂っているとした。既に一部の識者が「(米韓合同軍事演習で行っている)斬首作戦」も有り得るとしていたが、大手メディアが伝えたことで現実感が増した。

日米首脳会談後も日本株の上値が重い要因の一つに、この朝鮮半島情勢緊迫化が囁かれていたが、金正男暗殺事件が起こったことで、緊迫感が増している。暗殺事件は謎が多いが、韓民求・韓国国防長官が「擁立阻止が目的」との見解を表明し、これが大勢となっている。「擁立」には三つの説がある。

1)韓国説・・・パク大統領弾劾判定が迫り、「北風が吹く」とされる大統領選前倒しの公算がある。保守系の一部に、3万人を超えた脱北者等による臨時政府樹立の動きがあると言われている。察知した北が、取って代わろうとする勢力に強い警告、封じ込めを行った。

2)北朝鮮説・・・事件の10日前に伝えられた秘密警察トップ解任、幹部多数処刑事件との関連。金正恩委員長の側近の一人だった金元弘・国家保衛相が降格されたと言う。張成沢粛清を主導したが、何等かの異変の責任を取らされたとの見方。金正男を担ごうとしたとされる張成沢一派の粛清が続いている。

3)中国への警戒説・・・日米首脳会談の直前に米中首脳電話会談が行われ、中国側が金正恩排除に同意したとの見方)「一つの国」問題でのトランプ大統領の譲歩)。実際、19日に北朝鮮からの石炭輸入を「年内」停止すると発表。17日には王毅外相が6ヵ国協議再開に言及した(ポスト金正恩の監視体制に思惑)。北朝鮮が対抗して、中国が匿っていたとされる金正男排除に動いた(中朝国境は1000人程度の中国軍増強が伝えられた以外、平穏とされる)。

全く別の見立てもある。北朝鮮は核・ミサイルも問題だが、資金源として麻薬・偽札国家としても知られる。今、世界は麻薬組織撲滅に動いている。一つ一つの関連性は全く示されていないが、ドゥテルテ比大統領の麻薬戦争、コロンビアの左翼ゲリラ和解(ノーベル賞受賞)、そしてトランプ大統領が実効性の乏しい「メキシコ国境の壁建設」に拘るのは、人の流入ではなく地下トンネルまである麻薬流入を防ごうとしているとの見方。実際、トランプ大統領は当選直後に「犯罪者300万人送還」を表明している。金正男のビジネスは、麻薬・偽札が中心と言われていただけに、北朝鮮国家ともども排除対象になり得る。

市場は不透明感を嫌う。20日、黄教安・大統領権限代行首相は国家安全保障会議で、北朝鮮の追加挑発などに対する徹底した備えを呼び掛け、韓国軍が警戒を強化していると報じられた。3月の米韓合同軍事演習「キーリゾルブ」、野外機動訓練「フォールイーグル」に向け、米軍の東アジア配備も増強されており、否が応もなく緊迫感が高まる。何が起こるのか、事態は限定的との認識に変われば「蓋は外れる」と思うが、それまでは流動的事態を注視していくことになろう。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/2/21号)

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