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第41回 大阪府枚方市「ワークプレイス改革」による働き方改革の推進 (2018/5/15 大阪府枚方市都市整備部 連続立体交差推進室 井上大輔)

関連ワード : 働き方改革 公務員 大阪 枚方市 

「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。

はじめに

 2018年度、枚方市ではワークプレイス改革(いわゆる「働き方改革」)の取り組みが全庁的にスタートしました。「会議の見直し」「業務の見直し」「組織の連携・応援体制」「ライフの充実・意識改革」の4つを柱に、仕事の仕方を見直していく大きな取り組みですが、この実施に至るまで、枚方市の人マネメンバーが大きく関わりました。

 今日は、私が人マネに参加した2016年度から働き方改革の実施に至るまでをご紹介したいと思います。

「とことん対話」から「全てを伝える」へ

 枚方市は2016年度人材マネジメント部会に10年ぶりに参加しました。

 「組織・意識改革」を実現するために、多くの方と「対話」を重ね、私たち部会参加者3人で試行錯誤を繰り返し、たどり着いた仮説が「とことん対話」というキーワードでした。

 この「とことん対話」(納得するまで対話を重ねる)をすることにより、職員の意識が変わると考え、私たちの所属課で試行的に取り組みましたが、取り組みすらできなかったり、思うような結果には至りませんでした。

 その反省を踏まえ、人マネに1年間参加しての庁内での最終成果報告会では、今までに直面した悩みや壁、達成したこと、実際に肌で感じた全てのことを「“正直に”すべてを伝える」ことを目標に発表しました。

 これは同じ京都会場に参加していた兵庫県明石市、京都府木津川市の発表を聞いて「伝える」ことの重要性に気づいたためです。考え抜かれた施策であっても、聞いた人が納得した上で取り組まなければ何事も前に進まない。私たち3人はそう考えたのです。

 そして、庁内向けの最終成果報告会において、前半はパワーポイントでの1年間を通じた活動報告を行い、後半は、私たちが考えるあるべき姿を視覚でとらえてもらうことが一番伝わると考え、「組織変革・意識変革に関する取り組みが定着し、その結果どの様な変化が起こったか、10年後の私たちがインタビューを受けている」という設定で、某TV番組(情○大陸)を参考に動画を作成し、参加者の印象に残る最終成果報告会にするように努めました。

 報告会後のアンケート結果から参加者からは好評をいただけ、「対話」が重要であるということを伝えることができ、市長からも「斬新な発表方法で非常にわかりやすい。今後の人材マネジメント部会の取り組みをバックアップします」と心強いお言葉を頂けたことで、当初掲げていた「正直に全てを伝える」ことについては目標を達成できたのではないかと感じました。

2016年度人マネ最終報告会(庁内)

2016年度人マネ最終報告会(庁内)

2017年度の取り組み

 2017年は、人材マネジメント部会に参加した経験を活かし、具体的な取り組みを実施する気持ちでいましたが、通常業務の忙しさと課員への施策の周知不足で取り組みを実践するには至りませんでした。

 ただ、私としては、「実践的な活動はできないが、私のできる範囲で2016年度部会参加者が1年かけて考えてきたことや思いを2017年度部会参加者へバトンをつなぎたい」との思いから、部会にマネ友(修了生)として参加するように心がけました。

あらたな動き

 私がマネ友として活動している中、2017年7月に総合政策部からあるオファーをいただきました。それは、枚方市における『仕事のしかた』を幅広く検討し、全庁的な能率向上に関する取り組みを実践する「ワークプレイス改革」の実施に向けて、具体案の検討を行うチーム員として参加するというものでした。

 主な構成メンバーは、人材マネジメント部会参加者を含む計12人です。私たちが構成員に選ばれた理由は、「部会の活動の中で、職員インタビューで得られた職員の意見や、部会でえられた知識・経験を企画・立案する上で活かすために召集された」と聞いています。

ワークプレイス改革検討チーム

ワークプレイス改革検討チーム

 本来なら、人マネ参加者からの働きかけで実施することが理想的な姿であるとは思いますが、このような機会を与えていただいたことにより、よりスピード感を持って組織改革・意識改革を進められるのではないかと考え、参加することを即断いたしました。

 活動内容は、まず現在の枚方市役所における課題の洗い出しにより、4つの大きな課題が見えてきました。

 その課題は「会議のあり方」「業務の見直し」「組織の連携・応援体制」「ライフの充実・意識改革」で、課題ごとにチーム分けを行い、2018年度から本格実施に向けた検討を進めることとなりました。

ワークプレイス改革活動内容

 まず、検討を進める前に「この取り組みがどのように市民サービスにつながるか」という基本ルールを設定しました。このルールから外れれば「働き方改革」が意味のないものになってしまうと考え、部会で学んだ「価値前提」の考え方や「現実とのギャップをどのように克服するか」を「ダイアログ」に取り入れ検討を進めました。

 次に、枚方市における「働き方改革」を進める上で参考になる事例がないかということで、他の自治体および企業での先進事例を調査し、実際に足を運び、現場の声を聞くためにヒアリングした結果、様々な「気づき」を得ることができ、それを実際に落とし込む作業に取り掛かりました。

 その結果を基に、各関係機関と調整し継続して検討を進め中間報告会報告を行った結果、全体的には肯定的な意見が多かったが、抽象的な表現が多く、施策・スケジュールについて具体的に説明するように指摘を受け、より具体化した施策を継続し検討しました。

理事者ワークショップ(講師 伊藤幹事)

理事者ワークショップ(講師 伊藤幹事)

 中間報告後、より多くの意見を伺うとともに、組織全体の改革の機運を高めるために、人材マネジメント部会の活動と協力し、伊藤史紀幹事(株式会社Co-Lab(コーラボ)代表取締役)を講師として招き、市長含む部長級以上を対象にワールドカフェとOST(オープンスペーステクノロジー)を実施しました。

 そこで得た新たな「気づき」を基に改革案をさらに実効的な案にすべく検討を進め、最終報告に向けたとりまとめを行いました。

 「会議のあり方」については、今年度4月より部長級以上にタブレットを配布し、部長級以上が参加する会議については原則タブレットを使用することとなりました。また、会議の参加者の見直し、会議自体が必要かどうかという抜本的な見直しについても継続した検討を進めていきます。

 「業務の見直し」については業務プロセスの簡素化、仕事の見える化を進めるべくメールダイエット、朝夕ほうこく等を実施し、業務の効率化を図っていきます。

 「組織の連携・応援体制」については、本来なら、自由な形で業務応援できることが理想としてあるのですが、課題も多いため、まだまだ検討を継続する必要があります。

 「ライフの充実・意識改革」については、まず組織・職員の意識を変えることを目的とし、庁内システムにおいて「組織・意識改革」の必要性についての市長からの熱い思いを動画により定期配信し、またワークプレイスに係わる効果的な取り組みも随時配信する。第一弾として、市長から「ワークプレイス改革実施宣言」を配信しました。これについては、配信されたばかりであり、職員からの意見は聞けてはいませんが、私としては今までの文書による周知に比べ、より共感を得られるのではないかと感じております。

理事者ワークショップの模造紙

理事者ワークショップの模造紙

 私たちが提案したものが形になり、スピード感をもって進んでいます。

 この他にも様々な提案をしており、これから次々と形になってくると思います。また、機会があれば今後の活動についても皆様にご紹介し、皆様が活動する中で少しでも参考にしていただければと考えております。

おわりに

 このワークプレイス改革の活動は、「私たちマネ友が企画し、実施に向けて活動をしております」ということであれば胸を張って皆様に報告できるのですが、与えられたミッションの中での活動です。しかし、私は人マネでの活動を共感していただいた方々の働きもあって、今回の活動に繋がっていると感じております。

 今はまだスタートラインに立ったばかりです。組織の改革を進めるのはこれからが本番です。今後どのように枚方市が変わっていくのか不安もありますが、すごく楽しみでもあります。

 私はその中でも自分自身の所属するグループから活動を進めると共に、マネ友OBとして人マネ参加者と連携し、今後も様々な場面で活動を続けたいと考えております。

井上大輔さん

大阪府枚方市都市整備部 連続立体交差推進室 井上大輔さん

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■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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