東大阪市の課題(2011/09/22)
東大阪市は、約50万人の人口を抱え、大阪市、堺市に次ぐ大阪府で第3位の中核市であり、技術力の高い中小企業が多数立地する日本のものづくりを支えるまちです。その東大阪市で、来月実施される市長選挙(9月25日告示、10月2日投票)に先立ち、9月19日に公開討論会が社団法人東大阪青年会議所の主催で実施されました。司会進行はフリーアナウンサーの梅田淳氏。
討論会に参加した立候補予定者は3人で、元職の長尾淳三氏(59)、新人で元大阪府議会議員の西野茂氏(68)、同じく新人で元教師の美馬幸則氏(61)。候補者によるフリップを活用したプレゼンが行われるなど、テレビの討論会の手法を取り入れたものとなりました。
パネリストが考える最重要課題や理想のまちづくりをはじめとして、東大阪市の財政の健全化、福祉、教育の政策が討論されました。
公開討論会の概要
パネリスト (五十音順、敬称略) |
長尾淳三(59)無所属 元職 西野茂(68)無所属 新人 元大阪府議会議員 美馬幸則(61)無所属 新人 元教師 |
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コーディネーター | 梅田淳氏 フリーアナウンサー |
開催日時 | 2011年9月19日(月)14:00~16:00 |
開催場所 | 東大阪市民会館市民ホール |
主催 | 社団法人 東大阪青年会議所 後援:東大阪市自治協議会、リンカーン・フォーラム |
プログラム |
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パネリスト(立候補予定者)の経歴
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長尾淳三 1952年生まれ58歳
無所属 元職 【略歴】東大阪市生まれ。静岡大学卒業後、大阪民主新報記者。1979年東大阪市議。1998年東大阪市長。2003年大阪市大大学院に2年間在籍、都市政策修士を取得。2006年東大阪市長に再選、2007年失職。 -
西野茂 1943年生まれ68歳
無所属 新人 【略歴】東大阪市出身。関西大学商学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪府議会議員秘書を経て、1995~2006年大阪府議会議員。自民党府議団政調会長、総務常任委員会委員長などを歴任。 -
美馬幸則 1950年生まれ61歳
無所属 新人
コーディネーター紹介
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梅田 淳(うめだ・じゅん)氏 岐阜県立長良高等学校、日本大学藝術学部放送学科卒。1983年、アナウンサーとして関西テレビに入社し、バラエティからスポーツ、報道まで、様々なジャンルを担当。夕方のローカルワイドニュース『アタック600』では中継リポーターやスポーツキャスターのほか、天気予報では解説の福井敏雄とコンビを組み、一躍人気コンビとなる。1991年4月から2年間は早朝のワイドニュース『FNN World Uplink おおさか』を担当。関西テレビの名物アナウンサーとして20年以上の長きにわたり活躍したが、2004年3月31日をもって関西テレビを退職、フリーアナウンサーとしての活動を開始した。
討論会の動画
有識者コメント
政治学者や選挙・地域の課題に精通した有識者のコメントを掲載いたします。
1.最重要課題について
各人に課題をフリップにまとめてもらう形は話にまとまりが出て良い。最重要課題からは各人が背負っている背景を知ることができる。なぜなら、まちづくりのどのポイントに着目しているのかで、各人の支持基盤を知ることができるからだ。彼らはどのような人々の代表なのか。このポイントは他の政策に関しても各人の基本的なものの考え方を理解するためにも重要だ。
(早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
東大阪市は中小企業のまちとして全国に名をはせた。今、求められているのは、大きく2つと考える。一つは、どのようにして後継者等の問題を解決して地域経済を浮揚させ、持続可能な経済体制をつくっていくか。もう一つは、厳しい財政状況と高齢社会の中にあって、どのように東大阪市の財政再建を行っていくか。その点について各候補予定者がどう触れているかに注目したい。また、行政自身による事業立ち上げは、多くが失敗に終わっていることを歴史が証明している。そのことを考慮に入れる必要があろう。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ [HP])
2.理想のまちづくりについて
理想のまちづくりとは、地域の住民・企業などに対して市のまちづくりに求める協力姿勢をうかがい知ることができる。なぜなら、まちづくりは市役所だけで実現することはできないため、市と住民との間の関係について触れざるを得ないからである。各人が提示するハード面のまちづくりだけでなく、そこで暮らす住民の姿を思い浮かべながら各人の話を聞いてみると面白い。
(早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
理想のまちづくりを考えるときに、まちの構成員をどう捉えるかは考えるべきポイントである。現在は、高齢者が担い手となりつつあるが、現実はどうであるかよりも、特定年齢層に偏らない幼・若・壮・老が参画するまちづくりをどのように進めていくかを考える必要があろう。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ)
3.自己紹介と候補予定者の魅力について
三者三様のプロフィール紹介であり、何をやってきた人達なのか、市政についてどのような問題意識を持っているのか、自己紹介は各人の主張と経歴の妥当性が分かる公開討論会では実は最も重要な部分である。自己紹介がしっかりできているかどうかで、主張の一貫性が分かるため、しっかり注目する必要がある。
具体論を絡めながら自分自身のキャラクターがどのように市政運営に反映されていくのかが語られている。自己紹介の時とは違って経歴だけではない人間的な内面が良く語られている。あえて各人に自分の魅力を語らせるところが大阪の人情味を感じさせる質問だ。人柄が現れる各人の語り口にぜひ注目してほしい。
(早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
魅力については、各個人の捉え方となりコメントするところではないが、滑舌や発声などにより話が聞き取りやすいかどうかは、気にかけておきたいところだ。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ)
4.リーダーシップと投票率向上について
リーダーシップについては、ビジョンを示して意見交換というトップダウン型、市民の意見をまとめ上げるボトムアップ型などの質的な違いが浮き彫りとなり、各人の特徴が明確に表れた興味深い議論であった。また、投票率に関する議論は関しては、政治家として有権者に対する姿勢を知ることに役立つ。各候補者の政治的な人生の歩みの違いが投票率向上に対する方法のスタンスの違いに現れている。 (早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
投票率向上は短期的視点・中期的視点・長期的視点の3つの観点から考える必要があろう。今回・次回・10年後を見据え、どのように市民の政治参加を考えているか、チェックする必要がある。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ)
5.財政健全化について
東大阪市役所の財政状況は非常に硬直化している状況にあり、新市長には財政運営の手腕が問われることは間違いない。国民健康保険の収納率改善、入札率の改善・職員のボランタリー精神発揮、各種利用料の税金化など、多様な議論が行われている。各人の発言に市政の的確な問題点を突いた発言が多く傾聴に値する。 (早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
具体的な健全化策(どの収入を増やし、何を削るのか)の説明が必要である。また、東大阪市の中で、どのようにして財政健全化を行っていくかを考えなければならず、国税・府税の管轄にあるものは市長としては優先すべき検討課題ではないと言える。なお、人件費について言及するのであれば、財政再建の全体ビジョンの中で職員給与も含めた抜本的な削減についての政策が必要である。東大阪市の人件費に占める市長報酬の比率は約0.04%であり、市長報酬の削減のみではパフォーマンスと受け取られかねないことを指摘しておきたい。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ)
6.福祉について
福祉に関する問題は、子ども、高齢者、障がい者などの対象となる人々が多岐にわたるため、限られた時間の中でどの分野に対する発言が多いかということが一つのポイントとなる。具体論としては、商店街の空き店舗を福祉施策に利用すること、国から福祉のための予算を取るために働きかけること、老人福祉施設を巡る現市政の問題など、様々な観点とアイディアが議論されているため、自分に関係がある話題を見つけることができるはずである。 (早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
福祉は本来、多面的な概念であり、その対象を誰にしているか、一部に偏りがないかを確認しながら聞く必要があろう。また、扶助費の増大は近年著しいものがあり(構成比が平成18年28.1%から平成22年35.2%に増加)、財政とのバランスの中で、無制限に財源の根拠もなく福祉を充実させることは無理があろう。その点をどこまで説明がなされているか見極める必要がある。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ)
7.教育について
教育に関する発言は、子どもにどのような人間になってほしいか、社会がどのようにあってほしいか、という各人の人間・社会に対する評価基準が反映されるものである。子どもの教育というテーマを通じて、学力、社会規範、学習環境などのあり方が論じられることで、各人の望む社会の姿が明確になってくる。単純な教育政策の議論として受け止めるだけでなく、各候補者の社会に対する価値観の表明として受け止めたい。 (早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
考え方は三者三様であったが、政策についての具体的な言及が求められよう。政策面からみると、財源の確保について言及に乏しい場面が見られた。教育について、学力低下の問題と学力以外の教育問題についてそれぞれ考えが述べられており、しっかりと見極める必要がある。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ)
8.総括
公開討論会のような貴重な機会で市政の説明責任を果たすことも政治家としての能力の一つであり、今回の公開討論会には現職市長が登壇しなかったことが残念である。今後は現職市長が出席できないならば、文章やビデオレターであったとしてもコメントを寄せるような工夫があっても良いかもしれない。しかし、保守系、革新系、全くの新人など、各人の色合いが明確に出た内容だったように思う。そのため、現職市長がいなくても市長選挙の典型的な対立構造のようなものは再現できていたのではないか。
(早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
全体的に、具体的な政策についての言及がもっと欲しかった。また、厳しい財政状況にあっては、財源の裏付けについても説明が求められる。現職の市長が出席できなかったことが、盛り上がりを欠いた一因とも言える。今回は公務(敬老の集い)による欠席とのことだが、次回の開催にあたっては、そういった事も考慮に入れつつ、日程の設定をお願いしたいところだ。
(枚方市議会議員 岩本ゆうすけ [HP])