松島町の課題(2011/09/02)
日本三景でおなじみの松島町。先の震災でも大きな被害を受けた宮城県の観光拠点である松島町で、9月11日に町長選挙が実施されます(告示日は9月6日)。その町長選に向けた公開討論会が8月28日、社団法人塩釜青年会議所の主催で実施されました。
討論会に参加したパネリストは町長選に立候補を予定している3人で、元町長の内田鉄夫氏(63)、現職の大橋健男氏(60)、新人で市議の小幡公雄氏(62)です。
産業、雇用を中心とした震災復興のプランとその財源、
さらに今後の防災計画などの3テーマと、自身の重点政策を各パネリストが語り尽くしました。
観光地・松島の復興に向けての立候補予定者の想いと、
市民の課題をご覧ください。
公開討論会の概要
パネリスト (五十音順、敬称略) |
内田鉄夫(63)無所属 元職 元町長 大橋健男(60)無所属 現職 町長 小幡公雄(62)無所属 新人 町議会副議長 |
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コーディネーター | 河村和徳准教授 東北大大学院情報科学研究科(政治学) |
開催日時 | 2011年8月28日(日)14:00~16:00 |
開催場所 | 松島中央公民館(宮城県松島町) |
主催 | 社団法人 塩釜青年会議所 後援:公益社団法人 日本青年会議所、リンカーン・フォーラム |
プログラム |
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パネリスト(立候補予定者)の経歴
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内田鉄夫 63歳
無所属 元職 【略歴】元町長 -
大橋健男 60歳
無所属 現職 【略歴】町長 -
小幡公雄 62歳
無所属 新人 【略歴】町議会議員副議長
討論会の動画
有識者コメント
政治学者や被災地のボランティア団体等の選挙・地域の課題に精通した有識者のコメントを掲載いたします。
1.震災について
三者とも町政に関する過去の実績を有しているため、具体論に踏み込んだ議論が特徴的である。大橋氏が現職としての手堅い行政対応の展開、内田氏が元職としての実績とその反省に立った改善策、小幡氏が議会議員としての具体的な被災状況の指摘を行うなど、三者の立場の違いによって視点が異なる点が面白い。町民が実際に必要とするものは誰の視点に基づく提案か、非常に興味深い討論である。
(早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
実際に震災後の対応に当たってきた経験があるだけに、震災復興については現職の候補者にリアリティがあるという印象は否めない。ただ、三者共に震災の教訓が生きているようには見えない。防災無線の増設、「お年寄り110番」などのアイディアは提案されているが、電気が止まったときにどうやってそれを維持するのか、非常電源(発電機)の燃料は何日分備蓄しておくのかといった視点が欠けている。「しっかり」が頻出するが、何をどうしっかりとやるのかを語るべきだろう。
(情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授 湯淺墾道)
復旧プランは誰が語っても同じ内容になるのはしかたがない。しかし復興プランには独自性が打ち出せるはず。各者、もっと明確な政策の差別化を考えてほしい。その中で、現職の大橋氏が河川の問題に言及しているが、これは直近の地震・津波被害だけにとらわれず、地元の本質的な問題に着目した意見。鋭い視点だと思う。
(東北ライジング代表理事 株式会社ソーシャルプランニング代表取締 竹井善昭)
2.エンターテイメント総合施設の誘致について
カジノはその性質上極めてセンシティブな問題であり、地元に賛成派・反対派を抱えているため、三人とも勉強の価値ありという玉虫色の回答。しかし、現職は他二人と比べて一層慎重な姿勢を取っており、三者間に微妙な温度差が存在していることが分かる。各候補者によって、町民の合意形成に際して重視している人々(町民・専門家・観光業界・県など)に微妙な違いがあり、各候補者の物の考え方の差違が分かって面白い。
(早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
「カジノは芸術」と賞賛する推進派、慎重派、反対派と三者の見解が分かれた。ただ賛否両論ともに具体性が欠けているという印象である。推進派は税収や雇用等の具体的な経済効果を明確に語るべきであろう。この種の具体的かつ単一の問題については、住民投票で住民の民意を聞くという提案があっても良かったのではないか。
(情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授 湯淺墾道)
松島は昔から観光で栄えた町。その松島の町長であれば、観光政策にも独自の視点とコンセプトを期待したい。エンターテインメント施設=カジノではないし、観光投資は設備投資だけではない。町をあげて観光産業のための人材育成を行う、世界中から人が集まるイベントを開発するなど、世界の観光産業の潮流を見据えた観光政策を打ち出して欲しい。
(東北ライジング代表理事 株式会社ソーシャルプランニング代表取締 竹井善昭)
3.重要課題について
各候補者が大規模商業施設等の誘致、子育て支援の重視、震災ボランティアの「絆」を活用した観光政策の展開などの持論を展開。前二者は他の地方自治体でも取り組んでいることが多く首長としての手腕が問われるものだろう。後者は被災地ならではの政策であり、いまだ未知数の方法論。重点政策は、地域が持つ可能性とともに各候補者の経験・スキルによって成否が左右されるため、候補者の経歴と重ねあわせて重点政策の成否を比較することがポイント。 (早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉)
現職者が地域の絆などのソフト面の政策を強調し、それに挑戦する2候補者が大型店誘致などのハード面の政策を強調しているのがやや意外感がある。定住化・観光について、財源をどうするかという面からの説明が少ない。少ない財源の中では総花的な政策は実現できない。どこに資源を集中し、どこは縮小するのかが聞きたかった。 (情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授 湯淺墾道)
重点政策にはさらなる具体性が必要。人口を2万人にすることが政策なのではなく、どうすれば2万人になるのかを提示するのが政策。具体性をもっと明確にしてほしい。単に医療の充実を言うのではなく、たとえば医療特区にして世界中から医者と患者を呼び込む。そして医療観光で松島を再興するといった具体性が必要。内田氏が言及する「創造」と「貢献ネットワーク」の概念は重要。 (東北ライジング代表理事 株式会社ソーシャルプランニング代表取締 竹井善昭)