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「インターネットと『新しい政治』の実現に向けて」シンポジウム開催 (2012/12/06 政治山)

 インターネットが政治に与える影響や市民に求められることなどを議論するシンポジウム「インターネットと『新しい政治』─その実現に向けて」が11月29日、東京・千代田区永田町の衆議院第一議員会館多目的ホールで開催され、200名弱の若者を中心とした聴衆や報道陣が詰めかけた。当日の模様を主幹事『One Voice Campaign』事務局の西村亜希氏のリポートでお届けする。(政治山)

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当日は多くの参加者が集まり、盛り上がった 当日は多くの参加者が集まり、盛り上がった

 このシンポジウムは、「国民の声を政治に届けよう」と2012年5月に立ち上がった団体『One Voice Campaign』が中心となって開催されたもので、今回で3回目となる。One Voice Campaignは、ネット選挙運動の解禁を呼びかけている。過去2回のシンポジウムでは各党の国会議員が登壇。イベントを通じ、公職選挙法の改正を訴えたものの、法案は審議されないまま国会の解散となってしまった。今回のシンポジウムでは、次期国会に向けて公職選挙法の改正だけでなく、インターネットの利用も含めた「これからの望ましい政治のありかた」について、そして日本の将来について、議員や有識者、民間企業らが集結し熱い議論を交わした。

インターネットと政治──その現状と課題

 開催に先立ち第1部では、One Voice Campaign発起人の1人である江口晋太朗が、団体の設立やこれまでの経緯、シンポジウムの趣旨などを説明した。続いて、発起人の1人である谷本晴樹より、日米の政治に現場におけるインターネットの存在、国会におけるインターネット選挙運動の法案の過去の動きの説明が行われた。

 インターネットは、もはや「一般的なツール」として広く利用されている。そうしたインターネットを利用した政治のカタチとして、「透明性」「国民参加」「官民連携」を目標に掲げたオバマ米大統領のキャンペーンや政治活動の様子、また世界各国の状況について説明を行った。そうした中、さまざまな事例や研究をもとに、日本社会もそうした新しい政治のあり方について模索をし始め、事業仕分け会議のインターネット放送や、『さよなら原発1000万人アクション』、ソーシャルプラットフォーム『Change.org』による署名キャンペーンなど、市民1人ひとりの声を可視化し、政治に反映しようという動きがみえてきた。

 しかし、なりすましや記録の改ざんなどの懸念から、国会ではインターネット選挙運動の解禁は、1996年から一向に改正されないまま「継続審議」となっている。それを変えていくためには、今回のモデレーターでもある津田大介氏の著書にもあるように、われわれがウェブを利用して政治家に語りかけ、政治を自らの手で「動かす」という当事者意識が求められている、と谷本氏は語った。

インターネットを有効活用した信頼される日本政治を

 続いて行われた第2部のパネルディスカッションでは、パネリストに鈴木崇弘氏(城西国際大学大学院客員教授)、関聡司氏(新経済連盟事務局長)、平将明氏(自民党衆議院議員)、為末大氏(プロ陸上選手、株式会社R.project取締役)、藤末健三氏(民主党参議院議員・総務副大臣)、宮台真司氏(首都大学東京教授)、原田謙介(One Voice Campaign発起人)が参加。さらにモデレーターにジャーナリストの津田大介氏を迎え、さまざまな方向から1時間半に及ぶ議論が繰り広げられた。

 議論では政治のあり方や、インターネットがどう使われるか、そして、そうした政治と私たち市民がどう向き合っていく必要性があるかについて、それぞれの視点から語られた。以下、各登壇者のコメントをまとめた。

各界の著名人がパネリストとして参加。(左から)鈴木氏、宮台氏、藤末氏、平氏、為末氏、関氏、原田。右端は、モデレーターの津田氏 各界の著名人がパネリストとして参加。(左から)鈴木氏、宮台氏、藤末氏、平氏、為末氏、関氏、原田。右端は、モデレーターの津田氏

 為末氏は「ネットはツールであって、民主主義をどうよくするかということが目的」と語る。「スポーツでも政治でも問題点があれば、『何とかしてほしい』という声は多いが、『何とかしよう』という声は少ない。その垣根がネット選挙運動で崩れ、ただ意見を言うだけでなく、自らも実行しようという意識になり、政治が自分の側にあると思えるきっかけになってほしい」と話した。

 鈴木氏は「政治にコミットしやすくなるような『ネット選挙』の形式が必要だが、それ単体では考えてほしくない」とした。そして「『ネット選挙』という単語のみに意識を向けるのではなく、インターネット含めた市民と政治家との対話のための場をつくることの重要性について話し、熟議型民主主義、マスメディアを含めたさまざまなセグメントの組み合わせで、ネットにおける選挙や政治の現場を生かしていきたい」と語った。

 「『インターネット』という言葉が、政治の世界でいまだに特別視されている状況自体が不自然。インターネットを特別視するのではなく、当たり前のツールとして認識すべき」と語るのは関氏。「今の時代、インターネットは生活に根付いたもの。情報提供手段として重要であり、国民の情報取得手段としても使われるべき」と力説した。

 前衆議院議員の平氏は「いまの公職選挙法では、組織化されたバックがいないと出馬できない。しかし、ネットを使えば新規参入しやすくなり、既得の権力構造の上に立っている候補者にも勝てるのでは。民主党の組合勢力と、自民党の既得権益に新規で割って入りやすくするツールとして、ネットを解禁するのが重要」と、現状の公職選挙法の問題点について触れた。また、国会議員のネットリテラシーについても言及。国会議員のネットリテラシーは低いと断言し、ネット選挙活動反対の根幹は 「構造を変えたくない」と考えていると指摘した。「それらを変えていかないといけない」と、ネット選挙の重要性や、ネットを通じた政治の現場のあり方について語った。

 藤末氏はインターネット含めた、現状の政治のあり方の硬直性について言及。同時に、インターネットのさまざまな可能性について、「インターネットを通じて、ネット献金のあり方について話し、新しい議員を誕生させることで突破口があるのでは。いまの公職選挙法は個人の出馬などのチャンスが難しい。組織化された人の資金や票は、何らかの形で政治を狭める。だからこそ、組織的な資金の流れを止め、個人の寄付をしやすくすることが大切。ネットで献金することも1つのやり方だ」と提言した。

 宮台氏は現状のメディアのあり方について語った。2011年の原発問題以降に明らかになった、インターネットによる情報の有用性について語ると同時に、こうしたインターネットの情報に関して意識を向けてほしくない、とする政治家の本音を指摘。「政治家だけでなくマスメディアも変化の時代が起きている。政治家とマスメディアとのあり方についても、ネットを通じ、新しい対話の場が必要だ」と力説した。

 発起人の1人である原田は、One Voice Campaignがもたらした成果や問題点について言及。「ネット選挙解禁に向け、国会議員の賛否を聞いたり、ネット署名を集めたりするなどの『ロビーイング』を行うことで、その過程やその結果をオープンにし、より政治の現場の当事者意識が芽生えるのでは」と語る。さらに、ネット選挙運動が解禁されることで、日本にいる4万人以上もの政治家と直接やり取り可能になる。「その結果、政治家の活動の透明性が生まれ、自分が投じた1票の行方や、政治家の公約の変遷を含めた政策決定過程の可視化することで、新しい政治がつくれるのでは」と提言した。

 党首討論会がネット上で開催されるように、ネットは「公平性を保つメディア」として認識されてきている。津田氏は「『ネット選挙解禁法案』も5年以内に通り、今日の議論は今後のことにもいかされる」と、これからの展望に期待を持つ。そして、「もはや、ネット選挙の議論ではなく、『ネットと政治がどうこれから付き合っていくか』というこれからの政治について、このサミットを含めて、今後しっかりと議論していくべきだ」と語った。

 最後に、関氏が「ネットで情報を収集する人が、投票に行かなければ意味がない。ネットの情報発信が投票に影響を与える、ということを議員に知らせる意味でも投票へ行って、さらにはSNSなどで選挙へ行こうと呼びかけをしてほしい」と警鐘を鳴らし、会は締められた。

インターネットを使った選挙運動の解禁を求めて、署名活動も開始

 One Voice Campaignでは、世界2000万人以上に利用されている署名プラットフォーム『Change.org』にて、次期国会における公職選挙法の改正にともなうインターネット選挙運動の解禁を求め、署名を集めている。ぜひ、ネット選挙運動の解禁を求める人は、署名をしてもらいたい。

▽Change.org
「全政党党首へ:2013年度における通常国会において公職選挙法を改正し、インターネットを利用した選挙運動の実現を!」

(西村亜希)

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【One Voice Campaign】「インターネットと『新しい政治』―その実現へ向けて」(外部サイト)
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