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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】

第3回 マニフェストはどこへ行く?~現状はまだ発展途上(2012/06/14 早大マニフェスト研究所)

政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。マニフェストをテーマとした連載「マニフェスト学校~政治山出張講座~」では、議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考えていきます。その第3回、「第3回 マニフェストはどこへ行く?~現状はまだ発展途上」をお届けします。

マニフェストの拡がり~首長から議会・市民へ

 前回、「日本のマニフェストは地方から導入された」と書きました。2003年の統一地方選挙、元岩手県知事の増田寛也氏などマニフェストを掲げる首長が出現してからは、地方議会の会派・議員にも広がってきました。

 当初、「予算の執行権がない議会にはマニフェストは書けない」という批判もありましたが、「マニフェストは議員にとっても、有権者と結ぶ大事な契約ツール」と位置づける議員が、各地で誕生したのです。また、市民団体が自らマニフェストを作成する、首長マニフェストの達成状況を検証するといった取り組みも増えました。

参考)マニフェスト大賞応募数推移

 そうした、地方での広がりを表す1つの指標として、「マニフェスト大賞」への応募数の増加があります。マニフェスト大賞は、地方政治の政策コンテストで、地方選挙の投票率の低迷や、地方政治への住民の無関心に危機感をもったローカル・マニフェスト推進地方議員連盟の有志が、「政策中心の選挙・政治を真面目に進める地方政治家に光をあてよう」と、2006年から始めたものです。

 136団体221件の応募から始まった同賞は、昨年の第6回大会で1340団体1670件の応募を集めました。参加団体数は7年で約10倍に増加するなど右肩上がりに伸びており、マニフェストを政治に取り入れようという試みは、これからも広がっていくことが期待できます。

マネジメント力や工夫点も評価ポイント

 マニフェスト大賞では、学識者を中心とする審査委員会で評価を行っています。その評価で肝心なのは、内容だけではなく、「作成過程」「当選後の実行体制」「自己評価・第三者評価の実施と公開」「住民の巻き込み方」など、全体のマネジメント力が、高い評価ポイントとなっています。

2010年首長部門グランプリを受賞した山中光茂・松阪市長のマニフェスト 2010年首長部門グランプリを受賞した
山中光茂・松阪市長のマニフェスト

 2010年に首長部門グランプリを受賞した山中光茂・松阪市長を例に挙げてみましょう。

 松阪市は、企業的発想で抜本改革を進めるため市役所玄関に借金時計を設置したことで有名です。他にも、40政策について、43地区で市民と意見交換を行ったり、「部局長の政策宣言」を公表して毎年評価を重ねたり、「小学5年生にもわかる政治」をコンセプトにした中学生への勉強会を開催するなど、市民とともに「マニフェストを柱にしたマネジメント・サイクル」に挑戦しています。

 このように、やる気のある首長や議会から新しい手法が生まれ、そうした事例をマニフェスト大賞で共有し発信することで、政治家同士で良い政治を競争し合う「善政競争」が全国で展開しているのです。国政ではマニフェストへの信頼が低下していますが、日本でマニフェストが導入されてからまだ10年も経っていません。マニフェスト型政治は、さらに進化する余地があるのです。

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編集部より:「マニフェスト学校」は、次回からマニフェスト大賞審査委員へのインタビュー記事を掲載します。最前線でマニフェストに関わってきた学識者らが、マニフェストのいまを語る企画です。ご期待ください。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。

関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)

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