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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第20回 自治体職員の本音 (2013/02/28 早大マニフェスト研究所)

ご好評いただいている「早稲田大学マニフェスト研究所」連載。今週は各地の議会改革や独特の取り組みなどをご紹介する「週刊 地方議員」をお送りいたします。今回は、「地方議員が普段どういうことをしているか」を知ってしまった、自治体職員の本音をご紹介いたします。

◇        ◇        ◇

「先生! それ、あなたのお仕事では……」

「ちょっと聞いてよ。ウチの先生ったら……」(写真はイメージ) 「ちょっと聞いてよ。ウチの先生ったら……」(写真はイメージ)

 先日、行政の職員の方々と話していたときのこと。「議員のここが変だ」という話になり、かなり盛り上がりました。その職員は、次のような話をしてくれました。

「3月議会を前に、議員が私のところへやってきて『この条例のこの部分を、次の議会で○○に修正してくれ』と言われた。『分かりました 』と返事したものの、内心では〈それってあなたの仕事ではありませんか?〉と思っていたが、口が裂けてもそんなことは言えない」

 この話を皮切りに、議員の仕事って何だろう? という話題になっていきました。

「先生! ひょっとして選挙しか考えていない……」

 ある職員は、こんなことを打ち明けました。

「議員選挙が近づいてくると、『○○議員、第1委員会室へお越しください』などと、やたらと庁内放送を使う議員がいる。職員の間では『自分の氏名を周知したいがために使っているんじゃないの。いつもは役所へ来ないのに 』と陰口たたかれている」

 別の職員は「うちでは、生活保護の申請や公営住宅の申請のとき、市民についてきて、要件ギリギリで押し込んでくるような議員がいて困るんですよ。選挙の1年位前からやたらそうしたケースが増えてくる」

 うむむ!? 行政の体制にも問題がありそうだが、そもそも議員のお仕事って一体……。

「先生! その情報どうするんですか……」

 ある常任委員会でのこと。

  • 議員「○○事業の進捗状況について聞かせてくれ」
  • 職員「○○事業の進捗状況について報告します。○○事業の進捗状況は□□のとおりです」
  • 議員「前回の報告から、ずいぶん間が空いているじゃないか。なぜ毎回報告しない」
  • 職員「以後、細かに報告します」
  • 議員「今後、気を付けるように」

 職員の内心〈えっ、報告の中身については何にも聞かないのですか? 突っ込まれるのが嫌だから、こちらからは聞かれたことしか言いませんけど。情報を次の展開へ進めるのが先生のお仕事では……?〉

 まだまだ話題はつきませんが、行政職員の方々は、心では議員のみなさんに期待しているのです。地域の情報を集めてきて、その情報のよい部分はさらに拡大し、課題については、どのように取り組めば課題解決ができるか、政策や条例の検討を議会として行うような議会になってほしいと期待しています。それについて情報の出し惜しみをせず協力する気持ちはあるのですが、現状は、聞かれてもいない情報を話すと揚げ足をとられたり別の目的に使われたりするので……、という不安が先立ち、何も言わないということになるようです。

 議会として議員としての姿勢を示す「政治倫理条例」のようなルールを決めることも、議会改革の第1歩として必要かもしれません。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
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