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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第14回 災害時に議会はどう動くのか? ~軽井沢町議会の事例~ (2012/11/08 早大マニフェスト研究所)

 政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第14回は「災害時に議会はどう動くのか? ~軽井沢町議会の事例~」をお届けします。

災害時に議会は活動の場所がない

 2011年3月の東日本大震災発生時、被災したすべての役所で「災害対策本部」が直ちに設置され、避難誘導や減災対策、発災後の復旧計画の作成や復旧活動などに同本部が全力で当たりました(この災害対策本部とは、災害対策基本法に基づき設置される組織のことです)。

 ところで、これまでの連載で「地方行政は首長(執行機関)と議会(議決機関)の二元代表制というシステムとなっており、どちらも同じ有権者から選挙で選ばれた政治的対等性を持つ」ことを何度も書いてきましたが、議会は通常、災害対策本部にメンバーとして入っていないことが多いのです。実際、東日本大震災のときも、災害対策本部のメンバーに議会から誰も入っていない自治体がほとんどでした。すなわち、災害時に首長は組織をつくって対応にあたりますが、複数の議員からなる議会は組織的に行動するのではなく、議員個々の活動をするしかないのが実態だったのです。町の一大事に皆が力を合わせて活動する、という体制ができていなかったことが分かってきました。

軽井沢町議会の事例

軽井沢町議会が作成した議会災害時行動マニュアル軽井沢町議会が作成した議会災害時行動マニュアル

 こうした事例から学んだ軽井沢町議会は2012年2月16日に、「軽井沢町議会災害時行動マニュアル」を作成。全員協議会で決定しました。

 マニュアルには、議長は軽井沢町災害対策本部が設置されたときは議会災害対策室を設置(役場3階議会棟に設置)することができ、議員を指揮監督することが明記されています。

 議会対策室は次の任務が与えられます。

  • 1.町対策本部に対し、議会対策室の設置を報告する。
  • 2.議員の安否等の確認を行うと伴に、議会対策室が設置されたことを連絡する。
  • 3.町災害対策本部との情報交換及び諸要請を行う。
  • 4.議員に協力要請し、被災地及び避難場所等の状況調査を行う。
  • 5.災害情報を整理し、町対策本部に提供する。
  • 6.必要に応じて、議員を議会対策室へ招集する。
  • 7.必要に応じて、町対策本部と協議し、国・県への要望を行う。

 また、「自らの安否及び居所又は連絡場所を議会対策室に報告し、連絡体制を確立する」「議会対策室からの指示に基づき、各地域における被災地及び避難場所等での情報収集を行い、議会対策室へ報告する」「各地域における支援活動に協力する」といった、議員個々の行動も定められています。さらに、議会事務局の対応や活動時の服装なども示されているのです。

 このようにマニュアルを事前に作成し議会全体で確認し備えておけば、万が一の災害時に「何すればいいの?」と迷うことなく、すぐに行動することができます。

議員だからこそできること

軽井沢町議会は災害に対し、早い対応をする仕組みをつくっている
軽井沢町議会は災害に対し、早い対応をする仕組みをつくっている

 それでも、東日本大震災時に議員は「議員だからこそできる」役目を果たすケースが数多くみられました。例えば、安否確認。避難所には大勢の避難者が殺到しました。役所が破壊され、住民基本台帳などの名簿も喪失したところもあったので、「誰が避難所に来ているのか」「この人は誰なのか」という確認は困難を極めました。そこで、日常から地域内をくまなく歩いて知っている議員が、行政と一緒に安否確認を行ったのです。また、このような例もあります。突然の大災害時では避難所もごった返しているうえ、冷静な状態でいられないことが多いため、避難所運営に支障をきたす場合があります。そのようなとき議員が避難所のリーダーとなり、さまざまな避難所運営を取り仕切ったのです。

 軽井沢町議会は、議会として自分たちでも組織をつくり、執行部と連携して町の一大事に備えようとしています。大変すばらしいことだと思います。このように軽井沢町議会から学んで、ほかの自治体でも備えをしていただければと願います。また、地域をよく知る議員だからこそできることは山ほどあるので、議会も執行部が設置する災害対策本部のメンバーに入る、という案も検討してみる価値があると思います。日常は、首長と議会は政策の競争をすればよいですが、町の一大事とあっては1つになって一緒に取り組むということも考える時期ではないでしょうか。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
軽井沢町議会/軽井沢町公式ホームページ
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
週刊 地方議員
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