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【地方議員座談会「当選1回議員」/私たちの街の現状と抱えている課題】

<江東区の課題>「多子高齢化」に対応した都市型のまちづくり~子育て支援を中心に~(2012/07/13 江東区議会議員 鈴木綾子)

 政治山では、5月24日に行った当選1回の新人議員座談会の議論を受け、自治体ごとの現状と課題を比較するために、参加した5議員から「私たちの街の紹介」と題したコラムを寄稿してもらった。それぞれが所属する自治体の「人口規模」「予算規模、財政状況」「高齢化率」「これからの人口の推移」「現在、抱えている課題」「若年層の課題」を提示してもらい、課題に対して議員・議会・自治体が取り組んでいることを紹介していただいた。第5回は、江東区議会議員の鈴木綾子氏の記事をお届けする。

[関連ページ]【地方議員座談会「当選1回議員」】新人議員たちは、何を考え、どう行動しているのか

伝統と未来が共存する水辺が豊かな街

水辺に囲まれた江東区(東京ゲートブリッジ) 水辺に囲まれた江東区(東京ゲートブリッジ)

 東京都江東区は、東に荒川、西に隅田川が流れ、南は東京湾に面する、水辺に囲まれた「水彩都市」です。運河や内部河川が数多くあり、水辺と緑が創り出す美しい景観が魅力で、今年オープンしたスカイツリーや東京タワー、レインボーブリッジ、東京ゲートブリッジなども多くの場所から望むことができます。

 東京湾に面する南部地域に、豊洲や有明など臨海副都心などの広大な開発地を有していることも特徴的で、2014年度には豊洲新市場の築地からの移転整備が予定されるなど、大規模開発による新しいまちづくりが続いています。

 一方で、江戸の歴史文化や伝統を色濃く残しているのも特色で、今年が3年に一度の本祭にあたる深川八幡祭りや木場の角乗り、江戸切子などの伝統工芸などが有名です。「伝統と未来の共存」が魅力的なまちです。

 江東区の予算規模は、一般会計で約1,614億円、特別会計で835億7,200万円。予算規模は年々増加しています。なかでも、高齢者や子育て支援など福祉施策にかかる民生費の割合が43.7%と突出した状況です。

人口が急増し、「多子高齢化」が進行中

 全国的には少子高齢化と人口減少が問題になっている状況ですが、東京都が発表した最新の人口予測によると、23区の人口は増加傾向にあり、2010年に895万人だった人口は、2020年には916万人とピークを迎え、その後は減少すると予測されています(図2-1)。

 中でも江東区の人口は、2000年前後の臨海部の都市開発による高層マンションの建設ラッシュなどが主な要因で、2002年8月に40万人を突破し、2012年6月現在で47万8,828人。この10年間で約8万人も人口増えています。2010年から2035年までの増加数は、3万839人と見込まれており、東京都内で「今後25年間で最も人口が増加する区」であると予測されています(表4-1)。

 江東区の高齢化率は、2011年時点で19.0%(65歳以上の高齢者人口は8万9,632人)。2019年には21.2%(同11万4,459人)に増加すると区では推計しています(参照:「江東区の高齢化の状況等について」)。また、23区の中でみると、8番目に高齢者人口が多く、高齢化率は11番目に高い状況です。高齢化と年少人口増が同時に起きていることから「多子高齢化」と呼ばれており、保育サービスや学校施設などの需要と、高齢者向けの福祉施設・介護施設などの需要が共に逼迫(ひっぱく)し、一般会計に占める民生費の割合が43.7%と突出している原因となっています。

江東区は2035年までに区部の中で最も人口増加すると予測されている 江東区は2035年までに区部の中で最も人口増加すると予測されている
(同 P.10 表4-1)

 特に、待機児童の解消は、私たちの世代にとって喫緊の課題の1つであり、認可・認証保育所の整備に積極的に取り組んでいるにも関わらず、2011年の待機児童数は273人、2012年は253人(同年6月発表)と依然として解消しない状態が続いています。

 中でも人口密集地域である江東区南部では、保育園の入園が大変厳しく、希望する園に入れない、また、保育園が見つからないために仕事の継続に不安を抱える母親が増えています。施設整備を進めると、それが呼び水となり、さらに保育所の入所希望数が増加するという状況が続いており、問題の解決は容易ではありません。

 また、江東区では延長保育や病児保育、住宅の空き部屋を利用した小規模な保育施設「おうち保育園」など、働く世代が安心して子育てができる環境整備や、在宅で子育てする方々が地域でつながりを持てるよう「子ども家庭支援センター みずべ」などの子育て支援施設の設置によるバランスのとれた保育サービスの提供を重点施策として実施しているところです。

環境充実だけでなく、分かりやすい子育て支援情報の提供を

江東区では2020年の東京オリンピックに向けた招致活動をしています。 江東区では2020年の東京オリンピックに向けた招致活動をしています。

 子育て世代が急増する江東区で、働く女性が仕事と子育てを両立し、ワーク・ライフ・バランスのとれた生活を送ること。これは私の主要政策でもあります。

 保育所の新設や、地域での子育て支援環境の充実については、議会質問でも、区職員の方との日常のやり取りの中でも常に訴えてきておりますが、「子育て環境の充実」とともに私が必要だと考えているのは、「子育て支援情報の分かりやすい提供」です。これは、ICTの活用がキーになると考えています。

 保育情報など、子育てに必要な行政情報を得たいとき、会社で働く若い世代が、日中に区役所に行って問い合わせや情報収集などを行うことは大変負担になりますが、インターネットで必要な情報をより分かりやすく開示することができれば、親御さんの負担軽減に役立つと考えています。

 2011年度、私はインターネットを使った子育て情報の一元化を促進するために、全国の先進事例の調査などを行ったうえで、「子育て情報ポータルサイトの構築」や「江東区ホームページのリニューアル」「SNS(ツイッター・facebook)の導入」などの提案を行いました。

 その中で、実現となったのが、江東区の子育て情報を集約した「江東区子育て情報ポータルサイト」です。まだ始まったばかりの情報提供サービスですので、今後もより見やすい情報提供が図られるよう、重点的に取り組んでいきたいと考えています。

 特に、保育園の入園に関する情報などは、入園希望の親御さんに対して、必要な手続きや、待機児童対策のための区の取り組みなどが分かりやすく伝わり、親御さんの負担を軽減できるような情報提供のあり方を考え、今後も区に提案していきたいと思います。

 子育て支援を「目先の子育て環境整備」のみの側面でとらえるだけではなく、まちづくり全体の観点から、「ずっと住み続けたいと思う魅力的なまちをつくりたい」という視点で、住民と行政の懸け橋になれるような活動を今後も続けていきたいと考えています。

 未来に向かって成長を続ける江東区が、より暮らしやすく、住みやすいまちになるためには、区民の皆さまとこれらの問題意識を共有し、課題解決について一緒に考えていくことが大切だと考えています。区民の皆さまと対話を続け、一歩一歩、取り組みを進めてまいります。

(次回は政治山編集部による「私たちの街の紹介」のまとめです)

江東区議会議員 鈴木綾子
鈴木 綾子(すずき・あやこ)
1975年生まれ。97年、成城大学文芸学部卒業後、通信会社で法人営業に従事。仕事と子育ての両立に関心を持ち、2009年、早稲田大学大学院公共経営研究科でワーク・ライフ・バランスを研究。11年、同研究科修了後、東京都江東区議選で初当選。大学卒業までは東京都小金井市で育ち、現在は江東区豊洲に在住。議員となってからは、「子育て世代からの政策提案」に活動の重きを置いている。また、「議員活動の見える化」を合い言葉に、SNSなどIT活用やレポート発行、「あやこcafe」という市民参加の座談会を開催している。
HP:鈴木あやこ Official Web Site~江東区政に“働く女性”の目線を!~

【表1】江東区の将来人口の推計について (各年1月1日現在 単位:人数は人、構成比は%)

  平成21年(2009年) 平成26年(2014年) 平成31年(2019年)
人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比
人口総数 455,459 - 489,871 - 540,282 -
  年少人口(0-14) 53,614 11.8 63,382 12.9 72,331 13.4
生産人口(15-64) 313,727 68.9 325,494 66.4 353,492 65.4
  青年層(15-24) 38,998 8.6 34,888 7.1 40,529 7.5
前期壮年層(25-34) 72,137 15.8 66,243 13.5 57,570 10.7
後期壮年層(35-54) 136,389 29.9 167,352 34.2 202,768 37.5
熟年層(55-64) 66,203 14.5 57,011 11.6 52,625 9.7
高齢人口(65以上) 88,118 19.3 100,995 20.6 114,459 21.2
  前期高齢層(65-74) 52,820 11.6 56,667 11.6 58,645 10.9
後期高齢層(75以上) 35,298 7.7 44,328 9.0 55,814 10.3
世帯数 224,794 - 235,308 - 253,538 -
  平均世帯人員 2.03 - 2.08 - 2.13 -

注1)推計人口は、平成21年の住民基本台帳データを基に、今後の開発動向を勘案して、コーホート要因法により算出
注2)構成比の合計は四捨五入の関係で一致しないことがある
出典:「江東区長期計画における将来人口の推計について」

【参考】江東区の将来推計人口の推移 (単位:人数は人、割合は%)

  2010年 2015年 2025年 2035年
人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合
総人口(割合は
2010年=100)
433,008 100 438,729 101.3 437,625 101 425,104 98.2
年少人口 51,194 11.8 51,094 11.6 42,413 9.7 37,368 8.8
生産年齢人口 295,308 68.2 285,611 65.1 287,072 65.6 266,849 62.8
老年人口 86,505 20.1 102,027 23.3 108,140 25 120,886 28.4

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(平成20年12月推計)」
※【地方議員座談会「当選1回議員」/私たちの街の現状と抱えている課題】で取り上げた他の自治体と比較しやすいよう、国立社会保障・人口問題研究所のデータを参考資料として掲載しました。

【表2】江東区の平成24年度一般会計予算(項目別)

平成24年度当初予算額
(千円)
構成比(%)
議会費 947,974 0.6
総務費 22,250,284 13.8
民生費 70,631,816 43.7
衛生費 16,539,556 10.2
産業経済費 1,764,543 1.1
土木費 12,535,820 7.8
教育費 22,537,511 13.9
公債費 2,385,766 1.5
諸支出費 11,597,730 7.2
予備費 300,000 0.2
歳出合計 161,491,000 100.0

出典:平成24年度江東区予算(案)概要 P.5(pdfファイル)

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