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お母さんの心が壊れる前に―インタビュー特集「ROCKET」(下) (2016/7/5 日本財団)

学校に行かせようと地獄の毎日
視点を変えることで子に笑顔

「異才発掘プロジェクトROCKET」の一環として、現状の教育にはなじめない小・中学生とその親を支援するため6月18、19の両日、長崎市で初めて開催した「親子セミナー」。そこで聞いたお母さんの生の声を、前回に続き紹介します。

鷹を手に乗せて子どもたちに話をする石橋美里さん

「人と違った生き方」―どうして私は鷹匠になったか―。
鷹を手に乗せて子どもたちに話をする石橋美里さん

▽いっぱいある学び方

初めは学校に結び付くように、学校につながるようにと、いろんな手を使ったり、時には怒鳴ったりもしながら、必死に朝、送り出すということをしてきました。それでもやはり学校に行きたくないという反発が大きかった。その時ちょうどROCKETでの中邑賢龍教授の活動を知り、学校だけじゃなくて家庭の中でも、いろんな学び方がいっぱいあることを教わりました。

子どもたちと保護者でつくったトンネル

子どもたちと保護者でつくったトンネルの中を、
これからタカが勢いよくくぐり抜けます

学校に行かせよう、行かせようとしていたときは地獄の毎日、毎朝でした。今は、世界中で使われているゲームを家で夢中になってやっています。ものすごく奥が深いゲームで、ゲームを通して友達との関わり方やパソコンの扱い方を学び、何かを追求していく力、自分で調べる力、問題を解決する力を養うことができる。パソコンの画面に出てくる英語が何と書いてあるから分からないから、英語が分かるようになるともっと楽しんだよね、と気付くようにもなりました。

ちょっと私の視点を変えることで、子どももすごく笑顔が増えたし、生き生きしている。これをしなさいと言われると、子どもはどうしてもいやだという思いが先に立ち、拒否することが多い。楽しいことの中では、少し難しいことがあっても、楽しいことに囲まれて、ちょっとやってみようかなという気持ちになるようです。

▽どうすればいいの

次は別のお母さんの声です。ストレスからおととい、自分で髪の毛を切りました。手首の代わりに。1カ月に2、3回は死にかけます。精神的に。福祉の方も助けてくださる、学校の先生も助けてくださる、みんな子どものことを思って、助言をくださる。ただ皆さんそれぞれ価値観が違い、言っていることが違う。私の価値観と子どもの価値観も違う。どこに身を置けばいいのか、どこがこの子のためなのか、と悩んだ時に、じゃ自分は、親としてどう動けばいいのか。となった時に、もう本当に精神が保てなくなる。そのまま、つぶれていった方たちも非常に多い。私は比較的助けを求めることができたが、これが言えずにもうただ苦しんでいる、どこにも言えず自分の中だけで抱え込んでしまっている、そういう人が多い。思いを口にすれば相手も話してくれるのですが、それ自体できない人が多い。これが実情です。

皮手袋をはめた腕に飛んでくるタカを止まらせる体験をする子どもたち

鷹匠石橋さんの指導で、皮手袋をはめた腕に飛んでくるタカを止まらせる体験をする子どもたち。
タカの迫力に思わずのけぞってしまいました。

だから今回の親子セミナーのような場所は、すごく大事だと思います。しかし、ここに参加されないお母さんたちに、その場所がまたない。ここまで来れば分かり合えるけど、ここに来るまでの壁がすごく高い。その場所がどこにでもあるではなく、例えば同じ不登校の親の会に入る、といった、そのどこかに所属するまでの過程にハードルがあって、普通に生活をしていたら、そのめぐり合いの機会が回ってこない。回ってこないから気持ちを誰にも言えないまま、つぶれてしまい、心を壊してしまう。壊してからやっとROCKETのようなところがあるよ、という話が来る。最初から中邑教授がおっしゃるような環境が周りにあったら、私も心を壊さずに済んだのに、という悔しさがあります。壊れてしまった心を治すのはすごく大変です。壊す前に皆さんに楽になってほしい。

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