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政治家、政党ともに、求められているのは「実行力」

第7回政治山調査「2012年衆議院議員選挙に関する意識調査」(3/3) (2012/12/07 政治山)

関連ワード : 衆院選 調査 

TwitterやFacebookをはじめとするソーシャルメディアの中で、今回の衆院選がどのように語られているか。政治山では、「政治山リサーチ」のソーシャルメディア分析機能を利用し、11月21日から27日と、12月1日から4日の公示日を挟んだ6日まで2回に分けて「TPP問題」「原発問題」「増税問題」「改憲問題」をキーワードにTwitterの書き込み内容(ツイート)約20万件を収集・分析した。

つぶやきが多かったのは「TPP問題」「原発問題」

 グラフ10まず、それぞれのキーワードが11月21~27日(11月データ)と、12月1~6日(12月データ)でどれだけツイートされ、拡散されたのかを比較した(グラフ10)。グラフの青い部分が通常のツイートの数であり、赤色の部分はそのツイートのRT(リツイート≒引用拡散)となっている。ツイート数とRT数を合計した数は「TPP問題」が最も多く、それに「原発問題」が続き、以下、「増税問題」「憲法問題」という順になっている。また、この日ごとの推移をグラフ11に示す。

 Twitterの特徴として、ツイートがRTによって拡散されていくという伝播力を挙げることができる。この“伝播力”という観点から見ると、総数だけではうかがえない傾向が見えてくる。RT数をツイート数で割ることで、ツイートがどれだけのRTを生んだかを伝播力をスコアで見ることが可能となるのだ(グラフ12)

 ツイート数だけで影響力を測ることはできない。ツイート数が多いだけでRTされない「情報量は多いが、RTするに足る価値がない」ツイートもある。また、その逆で、ツイート数は少ないが情報価値が高いつぶやきも存在する。このため、「ツイートがその何倍のRTを生み出したか」という視点が必要だ。これは、それぞれの問題についてのツイートが「どの程度、RTするだけの価値があったか」の指標と解釈することもできる。言い換えると、それぞれの話題についてのツイートが「どの程度、中身のあるものであったか」=「情報の価値」を判断する基準となる。

 グラフ12を見ると11月データでRT数をツイート数で割った値(RT/T)が最も大きかったのは、「増税問題」の2.74倍。それに、「憲法問題」(2.67倍)、「原発問題」(2.46倍)、「TPP問題」(2.43倍)と続いている。12月データを見ると「原発問題」が3.50倍で最大となった。以下、「増税問題」(3.21倍)、「憲法問題」(3.05倍)、「TPP問題」(2.59倍)と続く。この基準でみると、「TPP問題」と「原発問題は順位が逆転する。また、「憲法問題」は情報量が少ないが、“情報の価値は高い”という傾向があることが分かる。

「TPP問題」「原発問題」の内容はネガティブ

 次に、それぞれのキーワードについて、各々のツイートが「ポジティブな内容か」「ネガティブな内容か」を判定する感情分析を行った(※)。その結果がグラフ13である。これを見ると、11月データはいずれの問題もネガティブなツイートの方が多く、特に、「TPP問題」と「増税問題」で、ポジティブなツイートが少なかったことが分かる。

 一方、12月データを見ると、「原発問題」のポジティブなツイートが約半数の49.6%に達し、ネガティブを上回ったのが目を引く。他のキーワードは、大きな動きがなかった。これは、この時期、日本未来の党が訴える「卒原発」がメディアで大きく取り上げられていた影響が少なからずあったのではないだろうか。

 さらに、これらのツイートから位置情報を取得できたものについて、それぞれのキーワードのポジティブ、ネガティブの分布からヒートマップを作成した(グラフ14)。ここでは、12月データの中を、「公示前」と「公示後」の期間に分けて分析した。また、特徴的な差異が出た「TPP問題」と「原発問題」に絞って結果をご報告する。

 「TPP問題」についてのヒートマップは、ネガティブなツイートが地方部で増えるという点で、特徴的な違いがあった。また、「原発問題」についてのヒートマップでは、原発の所在する地域もしくは近隣地域でネガティブなツイートが増える傾向があった。

グラフ13グラフ14

賛成派と反対派が意見効果?

 次に、ツイートという“情報”を誰が誰に転送したか、というRT関係についての分析を行った。ソーシャルメディアでは、ユーザーは情報の取捨選択が容易に行うことができ、自分好みの情報にしか接触しないという可能性が指摘されている。たとえば、反原発派のユーザーは反原発派の情報にしか目を通さず、その反対意見にはあまり接触しないという傾向だ。もし、この可能性が広範に見られれば、ユーザーは同じ見解のユーザー同士とのみやり取りし、反対の見解を持つユーザーとの間に“情報の差=溝”ができ、対話が難しくなる状況が発生する可能性がある。

 グラフ15もし、Twitterにおいてこの危険性が見られるのであれば、Twitterにおける意見は、賛成・反対の二極に分化した極端な意見ばかりであるということになり、いわゆる“世論”を抽出するサンプルとして不適切なものになってしまう。そこで、あるツイートをRTしたユーザーを賛成派(赤色)か、反対派(青色)かに色分けし、ソーシャルグラフとして表現した(グラフ15)。グラフの点と点の距離が短いものは、ひんぱんに「RTする」「される」の関係にある。ここでも、12月データの「公示前」と「公示後」で、特徴的な差異が出た「TPP問題」と「原発問題」の結果をご報告する。

 これらのグラフをみると、「TPP問題」「原発問題」ともに、反対派同士のみで固まっているものの、必ずしも反対派同士、あるいは賛成派同士のみでRT関係があるわけではないことが分かる。これは、いわゆる「晒し上げ」としてのRTである可能性はあるものの、それぞれのユーザーは、自分の意見とは違う意見にも接触しており、Twitter上の意見が必ずしも極端なものではないということを示唆している。さらに、Twitterを使うことで、自分とは違う意見に触れる機会を与るというポジティブな一面もあるようだ。

※この分析には、「東山昌彦、乾健太郎, 松本裕治, 述語の選択選好性に着目した名詞評価極性の獲得, 言語処理学会第14回年次大会論文集, pp.584-587, 2008.による、日本語評価極性辞書(名詞編)ver.1.0」を用いた。

◇        ◇        ◇

今回の衆議院選挙は、第3極を中心とした政党に関する話題や、TPP、原発、消費税など、さまざまな争点を持ち、近年になく注目を集めている。実際、今回の調査でも、投票意思を示す人が大きな割合を占め、各争点への問題意識も高いことが分かった。さらに、いまだ投票先を決めていない人が半数に迫り、選挙戦を占うことは難しいという状況も注目を集める理由の1つだろう。いずれにせよ、注目の結果は12月16日に明らかになる。

(政治山:二木頼之)

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