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「稼げる農家を増やしたい」 嫁ターンした男性が、野菜の加工品で地域と向き合う (2017/11/14 70seeds

関連ワード : インタビュー 宮崎 綾町 農業 

宮崎県綾町。化学肥料や農薬がもてはやされていた1988年に全国に先駆けて「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定した町です。以来、綾町は「有機農業の町」として、自然に寄り添い、その恵みを生かした農業に取り組んできました。

そんな綾町で、農作物の加工品づくりと販路開拓に取り組むのが梶山剛さんです。

「規格外の野菜や果物を加工して消費者の手に届けることで、農家さんの収入を増やしたい」という思いで梶山商店を立ち上げたと言います。

地域の課題に真摯に向き合う梶山さんにお話を伺いました。

梶山剛さん

梶山剛さん プロフィール
岩手県出身。綾町出身の奥様との結婚を機に綾町に移住。綾町の農産物や工芸品を扱う直売所の店長を経て、地域商社「梶山商店」を2017年1月に立ち上げる。梶山商店では、綾町の農家さんが育てた農作物の加工品を企画・販売中。

「ITで農業の“できる”をもっと」をコンセプトに展開するプロジェクト「できる.agri」の活動の中で出会った梶山さんの、もうひとつのストーリーをご紹介します。

Y(嫁)ターンで移住! 直売店の店長として地域に向き合う

――もともと綾町とつながりがあったんですか。

いいえ、もともとは岩手県出身です。お嫁さんが綾町の出身だったので、結婚を機に移住しました。Y(嫁)ターンって感じなんです(笑)。18歳で地元を出て、東京で服飾専門学校に入って、途中で音楽の道に入りました。30歳まで音楽をやっていたんですけど、結婚してこちらへ来たんです。

――今のお仕事に携わる前に、農業に関わりを持ったことは?

なかったですね。興味もなかったですし、今でも正直ひとつのビジネスとしての視点が強いです。でも情報収集のために畑に行ったりすると色々な課題が見えてくるんですよね。「これはなんとかしないといけないなあ」という思いで取り組んでいます。

梶山剛さん

――綾町に来て、はじめはどのように活動していましたか?

直売所の店長をやっていました。それまではもっと年輩の方が店長になることが多かったので、自分が抜擢されたときは、あまり信用されなくて大変でした。でもそんなことを言っていても地域がよくならない。だから、まず1年は現場で従業員さんと一緒にレジを打ったりして、溶け込めるようにしました。実際に、少しずつ馴染んでいっていましたね。

だいたい3年のスパンで、1年目に現場の問題点をきちんと見抜いて、2年目でDoして、3年目に売上を上げる、という計画を自分の中で立てていました。

――問題点とは?

売り上げが下がっていることですね。12年間ずっと右肩下がりでした。その理由は簡単で、お客さんの方を向いて仕事をしていないからです。「従業員の接客が悪い」って言われていたんですが、その悪いって言っている人達も、その当事者も、何が悪いのか分かっていなかった。それを教える人がいなかったのが悪かったわけですね。

――どのように改善に取り組んでいましたか。

9人の従業員1人1人に対して、毎月15分間の面談をしました。悩みを聴くことしかできないですけど。そうすると、雰囲気が少しずつよくなって、働きやすくなるんですよね。働きやすくなると、今度は楽しくなる。商品を手にしてくれたお客さんに、「こっちもどうですか? 」という提案ができるようになりました。そうすると一人一人の単価が上がって、売上が上がる。

お話を伺った、梶山商店のオフィス

お話を伺った、梶山商店のオフィス

――数字でいうと、どれぐらい効果があったんでしょうか。

3年目に1200万売上が上がって、次の年に800万上がりました。合計2000万上がったわけです。いい商品があっても伝えていかないとだめなので、人は本当に大切ですね。

――店長のお仕事を続けていた期間は?

4年3ヶ月やっていました。農家さんの相談をいつも受けていましたね。例えば「店長さん、お米が安いんだけどどうしようか」だとか、本当に気軽に。

――人の悩みを聞く中で、今手がけている加工品のアイデアを思いついたわけですね。

そうです。そして、初めから売れるものを作ろうとして作ったわけじゃなくて、大事なのは地域の課題に対するアクションだと考えていて。地域の中でなにが問題なのか見て、その問題に対してアクションをして、商品が出来上がっていく方が自然ですよね。商品を作ったとしても、その地域の問題と関わりのないものであれば、売れません。

農家さんの生活にゆとりを。地域の成功体験をつくりたい

――今の綾町の農業の課題とは?

農家さんの収入が増えていかないことですね。休みがなく、身体的な疲労が激しいため農家さんが倒れてしまい、働き方の変革が待ったなしの状況です。

――苦しい状況ですね。

地元の人達もなんとかしよう、と思って動くんですけど、新しいものへの拒否反応もあるので、難しいですね。地域の成功事例を作らなきゃいけないんですが、そのためにはみんなで情報の共有をして、ひとつのプロジェクトを出来る人たちが集まり形にしていく必要がある。

しかし結果が全てなので結果が伴わないと今までのやり方と違うことをやれば、やっぱり「なにやってるんだアイツ」って言われてしまう。それを「一緒にやってみるか!」に変えるためにはやっぱり稼がないと駄目です。稼いでいくと、休みもとれて、農家さんの生活にゆとりも生まれますしね。そのためには、自分が稼がないとダメなんですけどね。今は実際はまだ稼げていないので、しっかりと実績を積んでいきます。

梶山商店

――農家が収入を増やすために必要なことは、何がありますか?

成功事例体験をどんどん作っていくしかないですね。例えば自動化で成功している農業生産法人があっても、「そこだけが特別なんだ」とか言っていれば自動化は進みません。だからもし自動化を進めたいんだとしたら、みんなで進めていかないと厳しいですよね。農業は継続したい、でも人の手はこれだけ使いたい、なんていう議論ではなかなか前に進めません。もちろん職人の手でしかできないところは究めるべきだけど、任せられるところは任せないと。そうして、儲かる農家さんがどんどん増えればいいですね。

――地域特有の課題もあるのでしょうか。

特に宮崎は流通の面でも弱いところがあります。差別化ができていないんです。「宮崎県の商品じゃなくてもいいよね」って自分で作っている商品に対しても思ってしまいます。だから「『宮崎の商品じゃないと駄目だよね』に変えるためにはどうしたらいいか」というのが課題です。消費者の方はもし2つにんじんがあったら、安い方を買いますよね。だから、価格以外のところで差別化する必要があります。

――実際にどんな行動を?

知ってもらうための名刺がわりになるんじゃないかなと思って加工品を作りました。それがストーリー、すなわち生産者のリアルな体験を伝えることにつながると思ったんです。

農家さんの生活を豊かにするために梶山さんが取り組んだ加工品づくりとは? 後編に続く!

 

綾町の魅力はこちら「aya100(http://aya100.jp/)」に!

提供:70seeds

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