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売り手市場なのに求職者が武器を磨く深い理由とは (2017/8/16 瓦版

関連ワード : 人材育成 労働・雇用 

弾力化する職場と雇用のカタチVol.4

人材市場で起こっているある異変

有効求人倍率が1倍を超え、いよいよ人手不足は顕在化しつつある。就職戦線は、求職者有利の売り手市場だ。今後を見通してみても、人口は減少フェーズにあり、この状況が好転することは望みづらい。もはや、これまでの常識に捉われていては、人材確保はますます苦しくなるばかりだ。こうした潮流にあって、就活の動きにもちょっとした異変が起こっている――。

デジハリの採用イベント

さきごろ都内で行われたある採用イベント。11人の求職者に対し、100社以上の採用担当者が列をなし、次々と名刺交換している。来場した企業も申し込みが先着順であっという間に定員が埋まる狭き門をくぐり抜けている。まさに売り手市場を象徴するような光景だ。もっとも、11人の求職者は、選ばれし人。特に企業が渇望する優秀人材なのだから無理もない。

同イベントを主催するデジタルハリウッド・スクール事業部アライアンスユニットユニット長の原田紀子氏はこう明かす。「このイベントは過去50回近く開催実績があるのですが、ここ数年でその様相が変わってきています。かつては就職・転職をゴールにするイメージでしたが、最近はフリーランスとして仕事を受けたいという人材が増えています」。

同スクールでは、毎年2回開催するこのイベントにさきがけ、出場者の選抜オーディションを実施する。今回ステージに立ったのは、WEBデザイン部門でのオーディションを通過した精鋭だ。それだけに、直接優秀人材とコンタクトがとれるこの機会に、企業側の鼻息も荒くなるのも無理はない。

「求職者については子育てで離職したなど、女性が圧倒的に増えています。また、企業側も正社員という形にこだわらず、フリーランスということを気にしなくなってきています。さらに年齢面でも50代以上でも積極的に受け入れる傾向がありますね。要は優秀であればいい、ということのようです」。原田氏がこう説明する様に、求職する卒業生や受け入れる企業側の意識も、ここ数年で変化しているという。

多様な人材がスキルとともにアピールしたこと

実際、名刺交換に先立った行なわれた公開オーディションでは、多様なキャリアやエリアの人材が流麗なプレゼンを披露。出産で大企業を辞め、フリーランスとして海外で暮らしたいという女性、北海道から東京での仕事を求める女性、現在営業職で就業中だが、スクールでWEBスキルを習得し、キャリアチェンジを目指す女性、50前でフリーとしてWEB関連の業務委託を望む男性…。理由もキャリアも様々な人材が、自由で新しい働き方を見据えながら、ハイレベルなプレゼンで企業にアピールした。

デジハリの採用イベント2

WEB関連の仕事は時間と場所に捉われず働くには都合がいい。だからこうした傾向にある、という見方もできる。だが、原田氏は興味深い事実を明かす。「実はWEBスキルを学びたいということよりも、柔軟な働き方をしたいということで、デジハリに通ってくる生徒が増えているんです」。スキルではなく、働き方ありきでのスクール通い。かつてなら、売り手市場時は黙っていても就職先が見つかるため、スキル習得をする人員が減るのが通例だ。ところが、働き方改革が進む昨今では、自由に働くためにスキルを磨くーー。

人手不足が深刻になり、企業にとって人材確保がいよいよ困難になっている。その裏で、在職者も含めた求職者は、自ら働きやすさを整備・実現すべく、スキルを磨き、手に職をつけ、転職あるいはフリー転身での複業も視野に入れながら、未来をたぐりよせるために自分への投資を行う。人生100年時代も叫ばれる中、今後、こうした傾向が加速へ向かえば、いよいよ企業と個人の関係は、逆転しかねない…。(続く)

提供:瓦版

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