ネーミングライツ契約について  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   ネーミングライツ契約について

ネーミングライツ契約について (2016/11/30 企業法務ナビ

関連ワード : 千葉市 法律 

はじめに

 千葉市は18日、「千葉マリンスタジアム」命名権について、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営する「スタートトゥデイ」と命名権契約を17日に締結したと発表した。契約期間は12月1日から10年間で、施設名は同日から「ZOZO(ゾゾ)マリンスタジアム」(略称はZOZOマリン、またはZOZO)となる。

 市によると、ネーミングライツ料は年間3億1千万円。スタートトゥデイは毎年、市とロッテ球団にそれぞれ1億5500万円を支払う。

 市は今年6月、QVCから「当初の目的を達成した」としてネーミングライツ契約の途中解除を申し入れられたことを受けて、次のネーミングライツ契約締結先を探していた。

千葉マリンスタジアム

ネーミングライツとは

 ネーミングライツとは施設に命名できる権利であり、1990年代後半以降、スポーツ、文化施設等の名称に企業名を付けることがビジネスとして確立した。

 「施設、設備などの対象物に対し名称を付与することに一定の経済的価値を見出し、この名称を付与する権利」などと定義される。

 企業名や商品名を多数の利用者がいる地方公共団体の運営する施設に冠することによって、多くの人にそれを知ってもらうことができる。特にプロスポーツチームが利用したりアーティストがコンサートをするような大型施設になると、毎日のようにテレビや新聞に取り上げられ名前が出るので大きな宣伝効果が期待でき、世間の人々に名前を認知してもらえる。また地域密着を目指す企業にとっては、小さな施設でも企業名を冠すれば地元の人々に名前を認知してもらえる。

 ネーミングライツ契約では多くは以下のことを定めることになる。

ネーミングライツ契約で主に定める内容

(1)契約主体
施設所有者とスポンサーが当事者となる。

(2)契約基本内容
所有者がスポンサーに対し、施設命名権の使用を許諾し、スポンサーが所有者に対し、その対価として契約料金を支払うという内容である。

(3)使用許諾と対価
施設所有者は施設命名権の販売すること、スポンサーはその対価を支払うこと。

(4)契約期間
○年○月から何年など。

(5)命名権・愛称
使用する名称や愛称など。本件では「マリン」という言葉を使うという要望を踏まえて決定された。

(6)中途解約権
スポンサーが契約期間の満了前に本契約を終了させる場合、○ヵ月前までに所有者に通知し、残り契約期間の対価の全額を支払うなど

(7)期間終了後の取り扱い
スポンサーは契約期間終了から○○の期間までに看板などを撤去する。撤去費用はスポンサーが支払うなど。

(8)対価の支払方法
一年ごとにいくら支払うなど。

(9)契約の解除
スポンサーの責めに帰すべき事由により信用が堕ちたと所有者が認める場合、契約を解除できるなど。

(10)協議事項
本契約に定めのない事項、または本契約の解釈に疑義の生じたときは、甲乙誠意を持って協議して解決するものとする。

(11)その他一般的な条項
秘密保持、管轄裁判所、更新、権利譲渡などの禁止

中途解約条項がなかった

 QVCが今年6月、「当初の目的を達成した」として契約の途中解除を申し入れた問題で、市は27日、千葉ロッテマリーンズを含めた3者で契約解除に合意したと発表した。解除は12月1日付。

 千葉市とQVCとの契約では中途解約の条項が定められていなかったたため、両者で協議をして、当事者の千葉市、ロッテ球団との話し合いで違約金3億3000万円とを支払って途中解約した。市は、球場名称変更に伴う道路標識などの表示変更にかかった初期経費も別途請求する方針を示していたが、見送った。

ネーミングライツの商標

 施設の名前は、そのままでは商標登録できない。商標は消費者が商品・サービスの出所を識別可能とするために使用される表示のことで、商標権登録には、商品表示である商標とともに、指定商品を特定して商標登録出願する必要があるからである。

 スポーツ施設を貸して対価を得る場合であれば、「運動施設の提供」というサービスを特定すれば、商標に該当する。さらに、ネーミングをタオルとかTシャツに付してグッズ販売する場合、個々の商品を特定すれば、商標に該当する。

コメント

 QVCは、2011年3月1日から20年11月30日までの命名権を取得した2007年に宮城球場のネーミングライツ契約が解除された際は、契約解除条項の一として「社会的信用が失墜したと認められる場合」ではあるものの、契約期間を満了せず解除された事例があります。それを踏まえれば途中解約が起きうることも想定しておくべきであったように思います。今回は協議によって解決しましたが、やはりあらかじめ、想定されることは契約条項に入れておくべきと思います。

提供:企業法務ナビ

関連記事
ネーミングライツ契約は当事者だけのものではない?
指定管理者制度は、住民自治に応えられているか―鷹羽登久子 大府市議
野球観戦の高齢者の健康に及ぼす影響に関する共同研究スタート
「オレオ」から考える商標とライセンス契約
復興支援はいかにブランディングへつながったのか
関連ワード : 千葉市 法律