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公取委が米特許管理団体を違法認定、特許権と取引妨害について (2016/11/22 企業法務ナビ

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はじめに

公正取引委員会は18日、ブルーレイディスク(BD)の特許権を巡りBD製造販売業者「イメーション」(東京都)の取引を妨害したとして、米特許管理団体である「ワンブルー・エルエルシー」を独禁法に違反すると認定しました。特許権者としての権利行使と独禁法による規制について見ていきます。

ブルーレイディスク

事件の概要

公取委の発表によりますと、米ワンブルーはブルーレイディスクの規格に関する特許を特許権者からの委託に基いて管理し、ブルーレイディスクを製造販売しようとする業者に対して許諾を与える、いわゆるパテントプールです。ワンブルーに特許管理委託をしている特許権者は公正・妥当かつ無差別な条件でライセンスの許諾を行うと表明しておりました。

ワンブルーは2012年頃から日本国内でブルーレイディスクの製造販売を行っていたイメーション株式会社とライセンス許諾について交渉を行っておりましたがライセンス料について合意が出来ておりませんでした。イメーション側はライセンス料の設定根拠の提示を求めていましたが、ワンブルー側は無差別な条件で許諾を提供していることからライセンス料に関しては交渉に応じないとして拒否しておりました。

ワンブルーはイメーションの日本国内での取引相手3社に対してライセンス未許諾であり権利者から差止がなされる可能性がある旨通知し、その内の1社がイメーションとの取引を停止しておりました。イメーションはワンブルーの行為は独禁法違反に当たるとし行為の差止を求めて提訴し、2014年5月知財高裁によって違法とする判決が出ておりました。

独禁法上の取引妨害とは

独禁法19条は「不公正な取引方法」を禁止しており2条9項及び公取委告示(一般指定)によって具体化しております。一般指定14項では「競争者に対する取引妨害」を規定しております。公取委のガイドラインによりますと、取引妨害とは国内における競争関係にある事業者とその取引相手との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他方法を問わず不当に取引を妨害する行為を言います。誹謗や中傷、威圧や不利益な事実を通知すること、または不当な利益を供与すること等によって競争者から取引を奪う行為が挙げられます。

独禁法と特許権との関係

独禁法21条では「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」としています。知的財産権の行使と認められる場合には独禁法違反とはならないということです。ではどのような場合に「権利の行使」と認められるのでしょうか。

公取委の知的財産の利用に関するガイドラインによりますと、(1)そもそも権利の行使と認められない行為には独禁法が適用され(2)外形上権利行使と認められる行為でも、行為の目的、態様、競争に与える影響等を勘案し、知的財産制度の趣旨や目的を逸脱する場合には実質的に権利の行使とは評価されず独禁法が適用されるとしています。審決例としましては、パチンコ関連のパテントプール団体が既存業者の利益確保を目的としてライセンス許諾を拒否した事例や特許権が消滅しライセンス契約終了後でも国内での供給を制限した事例等があります。

コメント

本件でワンブルーはイメーションの日本国内での取引相手業者3社に対して、特許権者から差止請求がなされる可能性があると示唆しイメーションの製品を扱わないよう通知しました。この行為はワンブルー側によると、イメーションとのライセンス料に関する交渉を促す目的で行われたとのことです。これによってイメーションは取引業者1社との取引が停止しました。これは一般指定14項の取引妨害に当たります。

また上記知財高裁判決では特許権の濫用や不正競争防止法違反にも該当するとされました。パテントライセンスに関する交渉を有利に進めるという目的で行われていることから知的財産制度の趣旨や目的を逸脱したものと評価でき正当な財産権上の「権利の行使」とは言えず独禁法が適用されることになると言えます。ワンブルー側はすでに行為を停止していることから公取委は独禁法違反である旨認定しましたが、排除措置命令は出さない方針です。

このように一見独禁法違反に当たる行為でも正当な特許権、著作権等の行使であれば独禁法違反にはなりません。しかしそれはあくまで知財制度の趣旨の範囲内に限ります。特許権、著作権の許諾に関しては上記ガイドラインの方針を踏まえて検討することが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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