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市民が行政と「対話」で挑む静岡県牧之原市の先進的なまちづくり (2016/11/9 nezas)

先進的な地方自治の取組みにより、静岡県牧之原市が全国から注目されています。その理由は「市民協働自治」にあります。市民の意見が政策の基本方針にまで反映され、すでに多くの成功例を重ねているのです。

牧之原市が実現した市民による市民のための行政運営のあり方と、その背景や経緯を紹介します。

静岡県牧之原市で進む市民協働の先進的な試み

静岡県牧之原市は静岡県中部に位置する人口約5万人、お茶の栽培と漁業が盛んな地方都市の一つです。その牧之原市の「まきのはら協働プロジェクト」が、全国の自治体や市民から注目を集めています。

市民協働とは、文字通り行政と市民が力を合わせて、地域のさまざまな課題に対等な立場で解決していくことです。すでに多くの自治体で市民参画プロジェクトが始まっていますが、成功をおさめているとは言い難い状況です。なぜなら、それらのプロジェクトはあくまで行政主導であり、真の意味での市民協働ではなかったからです。

公共施設のあり方を市民と考える対話の場

公共施設のあり方を市民と考える対話の場(早大マニフェスト研究所コラムより)

牧之原市の市民自治とは

「まきのはら協働プロジェクト」の具体的な取り組みは「場づくり」「人づくり」「仕組みづくり」です。

● 場づくり
多くの市民が参加し、自由に意見を言い合うことのできるワークショップ「男女協働サロン」を開催しました。このワークショップは参加者一人一人が対話しながら手を動かし知恵を出し、成果を創造する場となっています。

● 人づくり
自治会や市民活動組織のリーダーに、ワークショップの手法を習得してもらい、実際の会議では進行役(ファシリテーター)として全体の運営を任せます。問題意識を持った当事者が調整役として意見をまとめることで、より具体的、建設的な施策の提案が可能になっています。

● 仕組みづくり
市民(7人)、市長、副市長、教育長、関係部長(3人)で構成される「まちづくり協働推進会議」では、協働プロジェクトの企画・運営や基本条例策定に関する調査・研究、男女共同参画のワークショップ運営支援などを通じて、市民自治を側面からサポートしています。

なぜ、牧之原市に市民自治が根付いたのか

牧之原市における市民自治のそもそもの発端は、任期11年目となる西原茂樹市長の「市民協働自治」への熱い想いからでした。そして、まず始まったのが、行政と市民による協働会議です。しかし当初は、意見を言いたいだけ言う人や、参加はしても発言しない人など、会議は迷走を重ねます。そこで、市民が進行役(ファシリテーター)となって全員参加でチームに分かれて対話を進め、行政は傍聴者(オブザーバー)として見守るスタイルを採用しました。ここで実績を積むことで、多くの建設的な提言が得られるようになったのです。

また行政側も、サロンでの決定事項を単なる市民からの参考意見ではなく最優先事項として取り扱い、具体的な成果へと結びつけています。

成功のポイントは市民主導とファシリテーターの育成

なぜ牧之原市では、市民自治が大きな成功をおさめているのでしょうか?

一つは、前述した「地域市民ワークショップ(男女協働サロン)」です。市の職員は、必要な書類を用意する程度で、会議の運営も進行も市民主導で行われます。市民側からすれば、自分たちの提案が目に見える形で行政に反映されるので、より意欲的な姿勢が醸成されます。

そしてもう一つが「市民ファシリテーター」の育成です。牧之原市では、各地域のリーダーや希望者を募って「まちづくり協働ファシリテーター認定コース」を設置しました。参加者は、実りある対話を実現するさまざまなノウハウを学ぶことができます。そしてこのファシリテーター資格を取得した人たちは各地の協働会議やサロンに赴き、現地の意見や希望を吸い上げ、実現するための貴重な提言をまとめていきます。

市民ファシリテーターを育成する研修会

市民ファシリテーターを育成する研修会(早大マニフェスト研究所コラムより)

地方自治から市民自治へ、そして地方創生へ

市民協働の結果、牧之原市民からは「行政がやってくれると思っていたことの意識が変わった」「楽しく地元のことを考えられた」などの意見があがっています。また、実際に道や建物をつくることを主張していた人の意見が変わったり、各地域でのお祭りや収穫祭、イベントの企画・運営や高齢者の居場所づくりなど、地区でできることはしようとする動きが出始めたりしているそうです。

また行政側も、当初は「行政のプロはあくまで市の職員。市民の意見は参考程度」という考え方から、「市の職員はあくまで市民に雇われている立場なのだから、市民の判断こそ最優先にすべき」という考え方に変わっていきました。

市民協働の結果として、すでに「牧之原市第2次総合計画」や「津波防災まちづくり計画」など、市民の生活の利便性向上や安全対策に直結する具体的な成果が数多く結実しています。

なお「津波防災まちづくり計画」は、第8回マニフェスト大賞市民グランプリを受賞し、西原市長は政策本位の地方政治を目指す第10回マニフェスト大賞 最優秀マニフェスト賞(首長)に輝くなど、その実績と知名度も全国レベルで広がっています。

「自分たちの街のことは自分たちで決める」という牧之原市の取り組みに、今後も注目が集まります。

提供:nezas

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