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下請法 50年ぶり一部見直し (2016/10/17 企業法務ナビ

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はじめに

政府は年内をめどに「下請代金支払遅延等防止法」(以下、「下請法」とする。)の一部を約50年ぶりに見直すとの通達を発する予定です。本企業法務ナビサイトでもたびたび取り扱ってきた下請法の運用は今回の見直しによりどのように変わっていくのでしょうか。

参考サイト

工事現場の仮設足場

下請法の概要

下請法とは、簡潔に言えば、経済的に弱い立場の下請事業者(個人も含む)を経済的に強い立場にいる親事業者からの無茶な取引・要求から保護するための法律です。下請法の適用対象となるかは、(1)取引内容と(2)事業者(親事業者と下請事業者)の資本規模で決まります。

下請代金支払遅延等防止法 条文

(1)対象となる取引とは(下請法2条1項から6項)、製造委託(事業者が他の事業者又は個人に物品の製造や加工を依頼する場合等)、修理委託(事業者が他の事業者又は個人に物品の修理行為を依頼する場合等)、情報成果物委託(事業者が他の事業者又は個人にプログラムやデザイン作成を依頼する場合等)、役務提供委託(事業者が他の事業者又は個人に運送やビルの警備を依頼する場合等)です。

対象取引についての詳細と注意点
参考サイト
製造委託・修理委託
情報成果物委託・役務提供委託

(2)対象となる事業者とは、上記(①の取引をする一定の資本規模を有する事業者であり、親事業者及び下請事業者共に資本規模の要件があります。詳細は下記の本企業法務ナビの記事を参照して下さい。

下請法について

以上の(1)(2)の要件を満たした際に、下請法の適用を受け親事業者は下請事業者が完成させた物品等を理由なく受取り拒否する行為等が禁止されます。また、親事業者は下請業者に依頼するときに発注書を交付する義務等も負いそれに違反した場合に公正取引委員会から勧告や指導等の措置を受けることになります。禁止行為・義務・取締り等の詳細を知りたい方は本企業法務ナビの以前の記事を参照して下さい。

下請法が適用された場合の禁止行為・義務・取締り等の詳細

見直し内容とその経緯

1.支払いルールの厳格化

下請法が適用されると親事業者が禁止される行為は、買いたたき(下請代金を通常よりも著しく低い額で合意する)・下請代金の支払遅延(下請代金の支払いを先延ばしにする)・下請代金の減額(下請代金を一方的に減額する)等が挙げられます。今回、見直しが通達される予定なのは下請代金の支払遅延に関する部分で、同法で禁止する割引困難な手形(下請法4条2項2号)に関する期間の定義が変更されます。現在、割引困難な手形の期間に関しては繊維業が90日それ以外の業種は120日以内と定められていますが、これを60日に短縮するとの通達を年内に発するとしています。

現在の取扱い

更に下請事業者に対する支払いは、原則として手形ではなく現金とすることを親事業者に要請し、手形の場合でも、割引負担料を発注側である親事業者が負担するよう求めることになります。

2.行動計画策定の要請

併せて親事業者となる企業に、業種別に自主行動計画の策定を要請し、下請事業者が不利益を被らないように取引環境を改め、収益性の向上を後押ししつつ賃上げの環境整備を進めていく方針です。業種別の自主行動計画は、既に世耕弘成経済産業大臣が自動車業界に協力を要請し、これに加え素材系・建設機械・電機情報通信機器・繊維の4業界にも同様の自主行動計画の策定を要請しています。

以上より、変更点の要旨は、下請事業者への支払いルールの厳格化とより健全な親事業者と下請事業者の取引関係構築のための行動計画策定を要請している点です。

3.下請法の現状

そしてこのような見直しは度重なる下請法違反が発生し、それに対して公正取引委員会の指導が行われてきたという背景があるといえます。本企業法務ナビサイトでも下請事業者の窮状を紹介してきました。公正取引委員会の発表によれば、2015年度の下請法違反による指導件数は5980件であり、これは過去最多の指導件数を記録し(2016年6月1日発表)、このような状況に対処するために見直しがなされることになったと考えられるでしょう。

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おわりに

今回の記事で取り上げた見直しですが、支払いルールの厳格化に関してはあくまでも通達を年内をめどに発する予定であり、企業に対する自主行動計画策定に関しても単なる要請に過ぎないと感じるかもしれません。しかし、今年9月15日に経済産業大臣によって発表された「未来志向型の取引慣行に向けて」によれば、これから下請法の運用がより厳格化していくことが予想されます。企業の法務担当者としてはそのような変化に対応できるように準備しておくべきでしょう。

経済産業省 ニュースリリース
未来志向型取引慣行に向けて(PDF)

提供:企業法務ナビ

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