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相次ぐ百貨店の閉店、空洞化が進む地方の中心市街地はどうなる (2016/9/20 政くらべ

関連ワード : 地方創生 金融経済 

大都市圏、地方を問わず、百貨店の閉店が相次いでいます。業態が時代に合わなくなった構造不況ともいえますが、訪日中国人観光客の爆買いに終了の気配が見えることも影響しているようです。特に地方では百貨店の閉店が中心市街地の空洞化に拍車をかけかねず、関係者は頭を抱えています。

柏駅周辺

柏駅周辺

売り上げ不振で深刻な冬の時代に突入した百貨店業界

三越伊勢丹ホールディングスは、傘下の三越伊勢丹が運営する千葉県千葉市の三越千葉店と東京都多摩市の三越多摩センター店を2017年3月で閉店することを明らかにしました。ともに競争激化や店舗の老朽化で売り上げが低迷していたのが理由です。

セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店そごう・西武は、9月末で北海道旭川市の西武旭川店、千葉県柏市のそごう柏店を閉店する一方、2017年2月で茨城県つくば市の西武筑波店と大阪府八尾市の西武八尾店を閉鎖する計画を発表しています。4店とも郊外型ショッピングセンターやインターネット通信販売に押され、売り上げが減少していました。

今年は既に埼玉県春日部市の西武春日部店、岩手県花巻市のマルカン百貨店が閉店しています。大都市圏、地方都市を問わず、百貨店の閉店ラッシュが続いているわけです。文字通り百貨店業界は冬の時代に突入しているのです。

訪日中国人の爆買い終了が売り上げ減少が深刻化

百貨店の閉店は21世紀に入って地方都市を中心に相次いできました。国内の売上高は1991年の9兆7,130億円をピークに減少が続いています。

インターネット通販の発展で店舗過剰状態が続く中、消費者の価値観の変化に対応できなかった構造不況業種ともいえるでしょう。ただ、ここ数年は売上高の落ち込みに歯止めがかかっていました。アベノミクスによる株価上昇で富裕層の消費意欲が高まるとともに、中国人を中心とした訪日外国人観光客の爆買いが売り上げを押し上げたからです。

しかし、年明け以後の株価低迷で富裕層の消費意欲は減退しています。爆買いにも終焉の兆しが見られ、高額品から単価の安い化粧品、日用品へ購入品目が変わりつつあります。このため、大手百貨店5社が発表した8月の売上高は既存店ベースの速報値でそろって減収に陥りました。外国人向けの免税売り上げも大きくマイナスし、百貨店業界の苦境が一段と鮮明になってきています。

地方都市では百貨店の閉店が中心市街地の空洞化を助長

百貨店の閉店がより大きな打撃を地域に与えそうなのが地方都市です。地方都市の百貨店の多くは中心市街地にあり、中心商店街の核店舗になっています。公共交通機関が発達している大都市圏と異なり、地方都市の多くはマイカーが住民の足。このため、郊外型ショッピングセンターへ客足が流れ、中心商店街はにぎわいを失いつつあるのです。

地域の人口減少も客足に大きな影響を与えています。その結果、閉店した店ばかりが並び、シャッター通りと化したところも珍しくありません。中には商店街振興組合が解散してしまったところさえあるほどです。

そんな中で百貨店が閉店すれば、中心商店街にとどめを刺すことにもなりかねません。閉店した百貨店の後にディスカウント店など商業施設が入居したところもありますが、大半は空きビルとなり、テナントの確保に苦労しています。ビルが取り壊されて空き地や駐車場となっている場所も増えてきたのが現状です。

苦肉の策で相次ぐ百貨店跡への市庁舎入居

北海道北見市や宮城県石巻市、栃木県栃木市などでは、百貨店跡に市庁舎が入居しました。全館を埋め尽くすテナントの確保を困難として、少しでもにぎわいを残そうと一定の利用がある市庁舎を入れたわけです。地域の一等地に新庁舎を建設するより費用を抑えられるというメリットもあります。

青森県青森市の青森駅前再開発ビル「アウガ」も市の第三セクターが経営破綻し、ファッションビル跡に公共施設を入れる方向が示されています。確かに市庁舎や公共施設があれば一定の人通りが確保されるでしょう。

しかし、それで中心商店街へ行こうと考える人がいるでしょうか。中心商店街は市の顔とよくいわれます。地方の人口減少に歯止めがかかる気配は見えません。百貨店の相次ぐ閉店を機に、地方都市は中心市街地の空洞化対策を見直す必要に迫られているのです。

提供:政くらべ

高田泰
50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。
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