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「トランプ氏、クリントン氏を逆転」は正しいけど注意が必要…本戦を左右する鍵とは?  ニュースフィア 2016年5月23日

関連ワード : アメリカ 大統領選 

 米大統領選の共和党指名獲得を確定させたトランプ氏の躍進とは対照的に、クリントン氏の人気が低迷している。一部の識者からは、トランプ氏に勝てるのはクリントン氏ではなく、むしろサンダース氏だという声まで聞かれ、最新の世論調査では、ついにトランプ氏の支持率がクリントン氏と並ぶ、または追い越したという結果が出た。本選では、サンダース支持者の票の行方が、勝敗を左右することになりそうだ。

◆ワーキングクラスの反乱は民主党にも波及
 CNNのコメンテーター、ジョナサン・タシニ氏は、不満の溜まった労働者階級の政治的反逆が、トランプ氏を利し共和党を混乱させているが、実はその影響は民主党にも及んでいると指摘する。

 同氏は、1990年代のビル・クリントン政権下で、民主党は金融機関の規制緩和、富裕層の減税など、超党派的政策を打ち出したと述べる。時期を同じくして北米自由貿易協定(NAFTA)が発足し、世界貿易機関(WTO)が設立され、労働者を犠牲にし、企業に有利なルールが制定された。以来、それまで労組に加入し、福利厚生のあるミドルクラスの職についていた人々にはまともな賃金が支払われる仕事がなくなり、以来彼らは景気低迷であろうが回復であろうが、すべての経済の議論から締め出されてしまったと感じていると同氏は説明する。

「あの当時、共和党政権であったらもっと悪くなっていた」と主張する民主党エリートの感覚のずれを批判する同氏は、「共和党より悪くはないから投票して」というパッとしないスローガンで、長年無視されてきた多くの有権者の信用を得ようとするのは無理な話だと述べる。一方トランプ氏は、「もう一度アメリカを偉大な国に」などと壮大な言葉で人々の傷を(たとえその気はなくても)癒すことを約束しており、政策の良し悪しにかかわらず、有権者はトランプ氏へと向かうのだという。

「信頼と誠実さ」においての評価が記録的に低いクリントン氏は、労働者の痛みを感じていると有権者に納得させることに苦戦しているとタシニ氏は述べる。対照的に、サンダース氏の信頼性と企業寄りの政策に一貫して反対する姿勢は人々の話題となり、有権者を投票所へ向かわせると述べ、本選でトランプ氏を倒せるのは、サンダース氏だとしている。

◆トランプ優勢と見るのはまだ早い
 最新のロイター/イプソスの調査によれば、全米の支持率は、クリントン氏41%、トランプ氏40%とほぼ並んだ。Foxニュースの調査では、トランプ氏がクリントン氏を3ポイントリード、ラスムセン・レポートの調査では、トランプ氏が5ポイントのリードと発表されている。

 英テレグラフ紙は最近の調査結果はクリントン氏には打撃だとし、多くのサンダース氏支持者がトランプ氏支持に回る可能性を報じている。同紙はまた、クリントン氏は民主党の白人労働者層の票が取れないと報じている。トランプ氏自身、本選ではこれらの有権者が党をまたいで自分に投票すると自信を深めており、クリントン氏を苦しめるサンダース氏を「あまり強く叩きたくない」とジョークを飛ばしている。

 一方で、ニュースサイト『Inquisitr』は、そもそもトランプ氏優勢と発表したFoxとラスムセンの調査は信頼性がないとしている。Foxの調査は統計的「異常値」だとしており、エモリ―大学の政治学者、アラン・アブラモヴィッツ氏も、調査が共和党支持者に過度に偏って行われていたと指摘している。統計分析を用いて選挙戦を説明する『FiveThirtyEight』によれば、ラスムセンの調査は2012年の大統領選世論調査で23社中4番目に高いエラー率を出し、2番目に高い共和党候補偏重傾向を示していたという。これらの調査は、初めてトランプ氏優勢と示したがために、メディアに大きく取り上げられてしまっただけで、一部の結果を重視するべきではない、と専門家は注意を促している(Inquisitr)。

◆カギはサンダース氏の無党派支持者
『FiveThirtyEight』のネイト・シルバー氏は、サンダース支持者の票がトランプ氏に流れるのではないかという見方に対し、クリントン氏巻き返しの可能性はあると述べる。

 最新のYouGovの調査では、トランプ氏対クリントン氏になればクリントン氏に投票すると答えたサンダース氏支持者は55%で、トランプ氏に投票すると答えたのは15%ほどだった。残りの30%は未定、独立系に投票する、棄権のいずれかとなる。

 シルバー氏によれば、サンダース氏の多くの支持者は、民主党支持というより無党派が多いが、クリントン氏の支持者の多くは民主党支持だ。NBCニュース・Survey Monkeyの調査では87%、フォックス・ニュースの調査では83%の民主党支持者が、トランプ氏ではなくクリントン氏に投票すると回答している。つまり、クリントン氏がサンダース氏を支持する多数の無党派を本選で引き寄せることができれば、十分トランプ氏を引き離せるということらしい。ただし、クリントン氏がそれに失敗した場合は、本選は最後まで分からない接戦になるとシルバー氏は見ている。

提供:ニュースフィア

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