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加入広がる地震保険 補償はどこまで必要か? (2016/5/11 JIJICO

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地震保険とは

ご存知の通り日本は地震大国と言われ、多くの地震を経験してきています。

阪神淡路大震災の時には、地震保険金の支払い負担が大きく、倒産に追い込まれた損保会社もありました。また、当時の被災者の中には思うように保険金が給付されず「地震保険は加入する意味がない」と思われた方も多くいらっしゃったようです。

倒壊家屋

この経験から、民間の損害保険会社のみで地震保険制度を運営することは困難だとして、政府が再保険する形で、国と民間の損害保険会社で共同運営されています。そのため割安な保険料で安定して地震保険を提供することができており、取り扱う保険会社による違いはありません。

「地域の地震危険度(当地区分)」「建物の構造」により保険料が決まり、そこから耐震・免震・建築年による割引があります。1年~5年の範囲で加入期間を決めることができ、長期間加入すると割安になります。

地震保険のそもそもの考え方として、地震で被災した人の生活の安定を目的にしている制度であるため、被害額すべてを補うためのものではありません。火災保険に付帯して、主契約である火災保険の30%~50%の範囲で加入することができ、「建物:5,000万円」「家財:1,000万円」が限度となります。

なお、火災保険に加入するだけでは、地震等が原因の火災、延焼等の損害は補償の対象とはならず、地震保険に加入している方のみ補償されます。だからこそ、国も地震保険への加入を推進しているのです。

熊本地震を受けて

地震保険料の等地区分では、地震の危険度を考慮して全国を1等地から3等地まで分けています。今回地震で大きな被害を受けた熊本は、地震の危険度が一番低い1等地でした。地震被害を受けたことがなく危機感が低い地区、とも言えます。

そのため、熊本県の地震保険の加入率が極端に低いのではないか、とも思いましたが、2014年度で28.5%、全国平均28.8%とほぼ同等の加入率でした。地震保険は、噴火等の被害にも対応しますので、熊本県でも加入される方が多かったのかもしれません。一方、大分県の加入率は22.1%でした。

この加入率、かなり低い数字だと感じると思いますが、20年前と比べると20%以上上昇しており、加入される世帯は年々増加しています。とは言え、加入していない70%~80%近い方は、保険等による補償は受けられません。政府からの支援制度等で状況により「数万円~数百万円程度の弔慰金や見舞金」「税金等の納税控除」「学校の授業料免除」等を受けることができますが、今後進んでいく上で、金銭的な悩みが大きくなる可能性は高いと考えられます。

もっと大きな補償がほしい時

住宅ローンが残っている家が倒壊したら、地震保険が給付されたとしても、元通りにするために再度住宅ローンの組み直しが必要な世帯も多くなるでしょう。

再建等にも備えたい、という場合、別途加入できる民間の地震補償保険で不足分を補う、という考え方もあります。

一般的な地震保険では、火災保険の50%までしか補償を付帯できないため、残り50%分を民間の保険会社で加入する、というのも1つの方法です。ただし、その保険商品によっては加入限度額や補償範囲に違いがあり、100%補償できない可能性もあるのでよくご確認ください。また、保険料の負担が大きくなりますので、家計と相談して加入を考えていただきたいと思います。

今回の大震災で、日本に住んでいる以上どこにいても、いつどこに大きな地震が起きるかわからない、と多くの人が感じたのではないでしょうか。まずは地震保険・地震補償保険・貯蓄等、どのように備えるかを含め、自然災害が起きた時、起きた後、どのように対応するかご家族皆さんで考えるところから始めてはいかがでしょうか。

最後に被害に遭われた地域の皆さまには、謹んでお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を心よりお祈りしております。

提供:JIJICO

著者プロフィール
佐々木 茂樹/ファイナンシャルプランナー佐々木 茂樹/ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルサービス株式会社
郵便局に17年間在局し、郵便・貯金・保険業務を経験。うち10年間は保険業務に携わる。その後、その間にAFP、2級FP技能士資格を取得し、2006年より三井住友海上きらめき生命でファイナンシャルコンサルタントとして勤務。現在、ファインシャルプランナーとして独立し活躍中。保険の見直しを得意とする。
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