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「ウニ」増えすぎで漁協もトホホ。長崎の海を「食べて」守る作戦 (2016/2/5 ジモトのココロ

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人工魚礁

寿司ネタでも高級な「ウニ」が増えすぎて困っている、という傍から見ると贅沢にも思える悩み抱えた地域があります。長崎県長崎市三重町にある長崎市新三重漁協では、増えすぎたウニによって海藻が根こそぎ食べられすぎてしまい、「磯焼け」が発生し、貝類の生育が悪化する被害が長年続いています。そこで失われた藻場の回復を目指した新製品開発が行われています。

「ウニ」が増えすぎて困っています!

海中の人工魚礁

海藻がつきやすい構造の人工魚礁

長崎県と言えば水揚げ量国内第2位の漁業県で、五島、壱岐、対馬などの漁場に恵まれた地域。中でも長崎市新三重漁港は、ハモや長崎県のブランド魚・ゴンアジで知られているのですが、1991年頃からムラサキウニの増加を原因とする磯焼けが発生しており、アワビなど貝類の生育が悪化し、地域の漁業に多大な影響が出ています。同漁協では6年前から増えすぎたムラサキウニの採取を行なうとともに、人工魚礁を設置するなどして、藻場の回復に取り組んできました。

海藻

そもそも何故、漁業において海藻がそれほどまでに重要なのでしょう。ご存知の方も多い通り、様々な海草や海藻の群落である藻場は、魚介類が藻そのものを食べるのはもちろん、魚介類の産卵場所であり、そして小さな魚の隠れ蓑となる「海のゆりかご」でもあります。ムラサキウニが藻を食べてしまうことで藻場が減少する磯焼けが起こると、魚介類にとっての餌場も産卵場所もなくなるため、結果として漁獲量の減少や魚介類の質の低下を招きます。

海中

長崎県では藻場回復のために藻を繁茂させよう様々な施策をうってきましたが、ムラサキウニが藻を食べてしまうため十分な生育に至らないことが課題となっていました。

ウニを食べて、海を育てる

漁場視察

長崎市新三重漁協による漁場視察

そこで長崎県漁連を中心に話し合いが行われ、環境や資源保全につながるウニの消費材開発が提案されます。ウニを消費材として商品開発ができれば、人が食べることで藻場の回復にもつながります。現在は磯焼けによりウニも餌不足で身も小さいそうですが、消費財活用によってウニの生息量を適切に調整することで、今後より良質なウニを提供できるようにもなります。

ウニ

生協で組織される団体・生活クラブ生協では長崎県漁連と協力し、豊かな漁場の再生を目指して、藻場の再生を商品の共同購入を通じて支援しています。2016年2月、生活クラブ生協では磯焼け対策で採取されたムラサキウニを製品化した「長崎産冷凍むらさきうに」を生協組合員向けに販売を開始。

「長崎産冷凍むらさきうに」の価格には、1個あたり50円の藻場造成支援金が含まれています。支援金で1基約2万5000円の人工魚礁を設置し、藻場の早期回復を目指します。生活クラブ組合員が商品を食べることで、豊かな海の再生を支援できるのです。漁獲量に限りがあるため、今回は2500個限定とのことですが、今後同様の取り組みを進めていくそう。

ウニを食べて海を守る。人の手を加えることで海の質を上げる「里海資本論」の原理が、長崎の海でも確実に進んでいます。

提供:ジモトのココロ

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