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24時間フル稼働型議員が子育て議員を排除する?議会で多様性は実現できるか (2017/9/21 大田区議会議員 荻野稔)

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 先日、子育て世代の男性議員や実際に出産を経験された女性議員の方と、議員の産休や育休を巡る議論を行う座談会に参加させていただきました。

 議員が議会を欠席する事由は、必ずしも妊娠・出産に限ったことではなく、病欠や忌引きなども含まれます。特別職の地方公務員と規定された特殊な形であり、一般的な公務員や民間企業とは働き方の形態が違うため、一概に比較できるものではありません。しかしながら、特別職の例で言えば杉並区で長期欠席の選挙管理委員に報酬の返還命令が裁判所から出された事例からも、長期に仕事を休む場合は民間と同じ基準の給与システムの導入を検討することも必要なのではないかと思われます。

 地方議員の政務活動費の不正使用、国会議員の政治資金の濫用などは、たびたび報道もされ、そのつど有権者の皆さまからのお叱りをうけています。残念なことに、金銭問題や倫理的規範意識の欠如といった、政治家の側が襟を正さなければならない課題も数多くあります。一方で、政治制度そのものも、政治家に「私」を投げ捨て、超人的な働きを求めるような制度も変える必要があるのではないでしょうか。

長らく一般のものではなかった普通選挙権

 当然のことながら、わが国の議員は選挙制度によって選出されます。

 議会制民主主義の中では、議員は住民の代表として、議会に送りこまれる存在となっています。老若男女、貧富の差に関わらず、議員が選出された地域に住まう方々の代表となります。しかしながら、歴史を顧みますと日本における選挙・議会制度は、議会制民主主義導入後すぐにはそうなってはこなかった面があります。

 自由民権運動の広がりから、1890年に憲法の発布、帝国議会が開かれました。

 この時の選挙は衆議院のみでした。現代の普通選挙と違い、満25歳以上で、国税の高額納税者のみが投票できた制限選挙であり、また女性は投票することができませんでした。日本で普通選挙が導入されたのは1925年のことです。この時も女性(婦人)参政権は認められておらず、女性の参政権が認められるのは、それから20年後の1945年のことです。

政治家はどのような存在であったか?

 前述のとおり、投票権すら特権的なものであり、とりわけ女性にとっては第2次世界大戦後まで得られないものでした。選挙権にせよ被選挙権にせよ、政治に関わる権利が長らく特権的なものであったことが、社会にどのような影響をもたらしてきたのでしょうか。選挙権は戦後、いわゆる「庶民」の手にゆきとどくようになりましたが、被選挙権は必ずしもその限りではなかったと考えられます。政治家はその地域の名士、金銭的・生活的に余裕のある方がなるもの、一種の名誉職のようになり、私達、一般庶民の生活と関係のないものとみられてきたように思います(議員には2世3世、また地元有力者の関係者が多い、という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか)。高額な供託金や選挙活動費用、あるいは政治家およびその関係者という局所的な人びとの間でしか習得できない独特の文化も、それに拍車をかけていると感じています。

 過去の政治制度がもたらしてきた社会的影響に対して、(必ずしも特権的な存在でなくなりつつある)現代の政治家も無縁ではいられません。現代の政治家を巡る環境はどうなっているでしょうか。マンガで一例を取り上げてみます。

政治家の休みってあるの?編1

政治家の休みってあるの?編2

政治家の休みってあるの?編3

政治家の休みってあるの?編4

政治家の休みってあるの?編5

いま、必要とされるのはどのような政治家か?

 議員は様々な勉強会・セミナーや地域行事などに参加することがもっぱらです。そういった催しは、土日祝日に開かれることが多いため、民間では休日とされる日は政治家にとってはむしろ仕事に精を出す日となっています。休みを取る場合は、平日にこっそりと取ることが多いのが現状です。休日に家から出なければいいのかもしれませんが、少し足を延ばし、買い物などをすることがあれば、マンガのように誤解されるようなこともあります。政治家自らが蒔いた種ではありますが、政治家の不祥事なども政治家の生活態度に対する厳しいまなざしの要因となっていることでしょう。

 一億総中流と言われた時代も一昔前のこととなり、日本は急激な少子化と超高齢化社会を迎え、長い不況と閉塞感の漂う時代になってきました。かつてのように、ある程度決まった幸福の形を政府や企業が描き、皆でそれを目指す時代から、ライフスタイルの多様化・分散化の時代となり、モデル(理想像)の描きづらい複雑な社会へとその様相が変わってきています。私は31歳になりますが、同世代の方や後の世代の方は、物心着いた時から、不況、低成長という社会情勢を見てきた世代になるのではないでしょうか。

 現代社会は、住民のライフスタイルが多様化し、個々人が自由な価値・生き方を選択しやすくなってきてはいますが、その一方で様々な生きづらさが依然として残されています。政治家には、これまで以上に住民や地域の様々な課題、生きづらさに寄り添うことが求められます。そういった中では、昔ながらの名士といった「身分としての政治家」以上に、一市民の代弁者として声を届ける、「職業としての政治家」の存在が重要になってくると思います。とりわけ、住民の生活に密着した課題を取り扱う地方議会には、社会・時代の多様化、課題の複雑化に対応できる政治家がもっと必要になってくると思います。

 一般市民の代表が政治の世界に参入しやすくするためには、(多くの方からご批判を頂くような)特権的な制度や(参入障壁として機能してきた)独特の風習を見直し、また政治家の働き方に関する制度も民間準拠とし、特権を持たない市民の代表が手を挙げやすい、働きやすい議会に変えていく必要があると思います。

終わりに

 あくまで私個人のことではありますが、自身は体力の回復、安息という意味で休みは必要であると認識しているものの、積極的に休みを取ろうと考えているわけではありません。事務所も深夜まで開けておくことがあります。その時間帯に地域の方が訪ねてくれることもめずらしくないからです。こう書いてしまうと、これまでの話と矛盾しているように思われますが、自分がときにハードワークする一方、政治家全体としてはそれを必須条件にはしないことが重要です。働き方もまた多様化するべきだと考えるからです。

 くりかえしにはなりますが、政治を「身分」でなく「職業」にするため、民間準拠の制度改革は今後も求められていくことになるでしょう。多様な立場・経験、属性を持った議員が誕生し、多様な声が反映されるためには、それが急務であると私は考えるからです。

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