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「100人の障害者雇用を実現したい」―斉藤りえ区議らがローランズ原宿訪問 (2017/6/16 政治山)

ローランズ原宿店 social flower & smoothie shop外観

ローランズ原宿店 social flower & smoothie shop外観

 6月6日、約1カ月前の5月8日に東京・渋谷にオープンした「ローランズ原宿店 social flower & smoothie shop」を、斉藤りえ北区議と田中匠身渋谷区議が訪れました。同店はスムージーや軽食を楽しめるカフェが併設された花屋で、障害者のスタッフが主に働く就労継続支援A型(以下、A型※1)の店舗です。

 当日は、障害者の雇用と生活支援を行う「ローランズグループ」の福寿満希代表が店内を案内し、斉藤、田中両区議と障害者雇用のあり方や周囲の環境について意見を交わしました。

ローランズグループ福寿満希代表

ローランズグループ福寿満希代表

 冒頭、福寿代表は原宿店オープンに至る経緯について、以下のように紹介しました。

 障害のある方が働ける花屋を都心部で作りたいと考えていましたが、障害者の就労支援に理解のあるビルオーナーは多くなく、テナントとして受け入れてもらえる物件を探すのが大変でした。かつて港区・赤坂でも検討を重ねましたが出店には至らず、昨年5月にようやく豊島区・駒込に花屋をオープンしました。

 建物の所有者に加えて他のテナントの理解や周囲への配慮も必要なため、事業を始めるにあたって物件探しに難航していたところ、今回は日本財団からの紹介があって、都心部への出店を実現することができました。このお店の入るビルオーナーは福祉に役立ててほしいとビルを日本財団に寄付してくださっています。

 また、渋谷区役所の職員の方とお話しする機会もあるのですが、新しくチャレンジすることに対して前向きで、多様性に寛容な印象を受けています。

 開店からもうじき1カ月となりますが、周辺の住宅にお住まいの方やアパレル関係の方、遠方から来られるお客様などにご利用いただいています。就労支援施設でカフェと花屋の組み合わせというのは珍しいこともあって取材も多いのですが、障害者雇用を売りにするつもりはありません。一つの事業者、一つの店舗として、積極的に情報発信していきたいと考えています。

 これを受けて斉藤区議は、「お洒落で華やかな店舗を見て、障害者雇用とは関係なく、一軒の花屋として素晴らしいと感じました。また、働く人も生き生きしていて、障害者としてではなく一人の人間として、とても魅力的です」と感想を述べました。

斉藤りえ北区議会議員

斉藤りえ北区議会議員

 かつて「筆談ホステス」として注目を浴びた斉藤区議は、2015年の東京都・北区議会議員選挙で、初めて聴覚障害者として議員になりました。障害者の福祉政策や雇用に関心が強く、北区内の就労支援施設などを視察したこともあり、今回の訪問から得たものは大きかったようです。

 次いで福寿代表が「チャレンジに前向きな印象」を受けた渋谷区について、田中区議は「長谷部健区長の影響が大きいのでは」と語り、「20年後に向けた渋谷区のキャッチコピーは『ちがいをちからに変える街』です。障害者やLGBT、あらゆる人が自分らしく生きられる街を目指しています」と同区の姿勢を紹介しました。

左から田中匠身渋谷区議会議員、斉藤区議、福寿代表

左から田中匠身渋谷区議会議員、斉藤区議、福寿代表

 さらに福寿代表は、現在の課題と今後の展望について以下のように語りました。

 事業所の運営については、一人ひとりの障害特性にあわせた適材適所が重要です。業務分担についてはトライ&エラーで、やってみないと分からないこと、予想を覆されることも多々あります。働くことやお金を得ることの意味を理解してもらえるように、本人と相談しながら適性を見つけていきたいと思います。

 まずは今一緒に働いている仲間の雇用を守ることを最優先に考えています。現在は15人ほどですが、将来的には障害者の方を100人雇用できるような環境を整えたいと。

 また月額報酬については、最低賃金である時給932円以上で雇用契約を結んでいて、すでに全国平均の6万7,795円を超えており、これを13万円まで引き上げ、生活保護を受けず社会保険に加入する障害者が増えて、自立することを目指しています。

 私は現在28歳ですが、以前は「38歳までに100人雇用」を目標としていました。今回、日本財団の支援を受けることで事業推進の加速を実感し、自身のロードマップを3年前倒して「35歳までに100人雇用」と定めています。

福寿満希代表

福寿満希代表

 また、福寿代表は自身がそうであったように、自宅の一角で花屋をスタートするような障害者が増え、それぞれが地域で自立することが理想であると語り、田中区議は「建物のオーナーや他のテナント、周辺の理解といった環境を整えるためには、政治が果たすべき役割も大きい」と指摘し、積極的な情報発信に前向きな姿勢を示しました。

 その後、福寿代表から障害をもつ議員としての苦労を聞かれた斉藤区議は、自身の経験を踏まえて「ハード面だけでなく、ソフト面でのバリアフリーが大事」と述べ、聴覚障害者が議員となったことで北区議会が大きく変わったことや、翻訳と読み上げのアプリ「UDトーク」(※2)を紹介しました。

 斉藤区議の登場で、聴覚障害者が質疑に立つなど議員として活動することを想定していなかった議会が短期間で変わり、当事者と関わり合うことで職員や他の議員の意識も大きく変わったとのこと。技術的な進歩によるコミュニケーションの改善・向上は目覚ましいものがありますが、あわせてそれを使う人の「心のバリアフリー」も進めてく必要があります。今回オープンしたローランズショップ原宿は、その拠点となる可能性を秘めているかもしれません。

左から斉藤区議、福寿代表、田中区議

左から斉藤区議、福寿代表、田中区議

 

※1 A型は障害によって企業等で働くことが困難であっても雇用契約に基づく就労が可能な人を対象に、就労の機会を提供するとともに生産活動を通じて知識と能力の向上に必要な訓練などの福祉サービスを供給することを目的としていて、原則として最低賃金を保障する仕組みの「雇用型」障害者福祉サービスです。これに対して雇用契約を結ばずに作業分の工賃を受け取る「非雇用型」を就労継続支援B型といいます。

※2 「UDトーク」は障害者だけでなく、言語や世代間のバリアフリーを実現するコミュニケーションアプリ。

ローランズ原宿 social flower & smoothie shop
 場所:東京都渋谷区千駄ケ谷3‐54‐15
 営業時間:午前11時~午後7時

日本財団「はたらくNIPPON!計画」

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