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市民からの反響は100件以上―政活費をネット公開した伊藤優太・仙台市議が寄稿 (2016/7/25 政治山)

 31日投票の東京都知事選では、舛添要一前知事の辞職原因となった「政治とカネ」が主要テーマの1つといえます。国会議員の場合、歳費とは別に月額100万円の文書通信交通滞在費(文通費)と、国会各会派に所属議員1人当たり月額65万円の立法事務費が支給されますが、いずれも使途の公開は義務づけられていません。

 地方議員の場合、議員報酬とは別に各議会で定められた月額の政務活動費(政活費)について、地方自治法で、地方議会の会派や議員が、収支を議長に報告するよう規定されています。政活費はおよそ6割の自治体で支給されており、領収書の添付などは各自治体の判断に委ねられていますが、報告の制度化によって野々村元兵庫県議の不正問題が発覚しました。

国より地方で進む政治資金透明化の取り組み

 地方議会では、さらに一歩踏み込んで政治資金の流れを透明にしようと志す議員がいます。ブロガー都議として有名な音喜多駿議員(32)は議員報酬を含めた収支全てをブログだけでなく新聞紙面上でも公開し、有権者の啓発に努めています。また、千葉県議会の水野友貴議員(33)は昨年度、余った政活費274万円余を返還しました(水野議員の寄稿を参照)

 今回ご紹介する仙台市議会の伊藤優太議員(31)は昨年8月の初当選後、同年9月から今年3月に交付された政活費245万円の収支と領収書を自身のウェブサイトで公開しました。同市議会では、政活費の収支報告書と領収書の提出を全議員に義務付けており、過去5年分の提出内容は議会棟で申し込めば閲覧できますが、ネット公開の規定はありません。

 伊藤議員の公開は、仙台市議で初の試みとして地元ニュースにもなりました。その思いについて、今回、伊藤市議にご寄稿いただきました。

政務活動費の収支と領収書を公開した伊藤優太議員のウェブサイト

政務活動費の収支と領収書を公開した伊藤優太議員のウェブサイト

地方議会や地方議員の襟を正す姿勢が問われている

伊藤優太(仙台市議会議員)

 宮城県議会では自民党所属の安部孝県議会議員が政務活動費の不適切な支出により議長職を辞任した。現在行われている東京都知事選挙でも「政治とカネ」が争点のひとつになっている。

 公金の支出のあり方について、市民の視線は厳しくなっている。毎日歯を食いしばって、働いて収めた税金の使い道を決めるのが政治である。政治に誠実さ、透明性を望むのは納税者として当然の願いだろう。

昨年の市議選で政活費のネット公開を公約に

 私は昨年行われた仙台市議会議員選挙で、政務活動費のネット公開を公約のひとつに掲げた。しがらみと言われる組織や団体の支援を受けず徒手空拳の選挙戦の中、新人の私に多くの期待を寄せて頂けたのは、襟を正す姿勢について市民の賛同が得られた結果だと思う。これからは議員として公約をいかにして実行していくかが問われている。

ネット公開に「スタンドプレーだ、パフォーマンスだ」と批判も

 仙台市議会の政務活動費は月35万円で、使い残したものは年度末に収支報告を提出した後に市へ返還をする。私は政務活動費の収支と領収書を独自にネット上で公開した。仙台市議会では初めての試みである。

 スタンドプレーだ、パフォーマンスだ、という批判もあったが、掲げた公約をできる部分から果たしていくのは政治家として当たり前のことだ。すでに政務活動費のネット公開を実施している自治体もあるが、いまだ仙台市議会では制度としては実施されていない。ネット公開の方法に関して市議会として具体的なルールはないが、議会事務局と調整を行い、現状の条例や規則に抵触しない範囲で、独自に試験的な形で公開へと踏み切った。

30ページに及ぶ詳細な内容が公開された収支報告のPDF

30ページに及ぶ詳細な内容が公開された収支報告のPDF

市民から100件以上の反響

 ネットでの公開後、公開の方法や使途について、市民から100件以上のご意見を頂戴した。その多くは今回の取り組みについて賛同するものであり、「まず公開をする」という姿勢についてご評価をいただいたのだと思う。「議員一人が公開しても何も変わらない」という意見もあったが、これだけ多くのご意見をいただき、市民内の議論が起こっているのだからそれだけでも大きな収穫であろう。私自身、政務活動費の情報公開のあり方について、市民の関心の高さを改めて確認する機会となった。

公開情報は見てもらいやすい方法で提供するべし

 現状でも仙台市議会では議会棟で申し込みを行えば過去5年間分の政務活動費の使途と領収書を閲覧できる。しかし、わざわざ議会へ出向くという手間と時間をかけて閲覧する市民がどれほどいるだろうか、市民は日常で忙しいのである。スマホやタブレットの普及で多くの市民がネットで情報を得ている中で、政務活動費の公開情報をいかに見てもらいやすい方法で提供するかという視点は、地方議会が当然持つべきものである。

「まず公開する」姿勢が、不信感を払拭する第一歩

 国政と比べマスコミ等で報じられる機会が少ない地方議会を、選挙後も日々市民が関心を持ってウォッチし続けることが、「おまかせ民主主義」に陥らないためには必要である。

 そして市民がウォッチしやすい、知りたい情報へアクセスしやすい環境をつくることが、地方議会への時代の要請ではないか。「まず公開する」この姿勢が、地方議会への不信感を払拭する第一歩である。

伊藤優太(仙台市議会議員)<プロフィール>
伊藤優太(いとう・ゆうた)

1985年、宮城県仙台市生まれ。仙台市立大和小学校、蒲町中学校、宮城県立貞山高等学校、國學院大学文学部文学科卒。大学時代は新聞奨学生やアルバイトを掛け持ちし勤労学生として学ぶ。マネジメント会社でのサラリーマン経験、自治体議員の経験を経て、故郷仙台で働くことを決意。2015年8月仙台市議会議員選挙(青葉区)にて初当選。所属委員会は、都市整備建設委員会、防災・減災推進調査特別委員会。
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