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[用語解説]労働者派遣法

労働者派遣法改正のポイント~雇用は安定化するのか? (2015/10/30 政治山)

 9月27日に閉幕した第189通常国会で「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下、改正派遣法)が可決・成立しました。

そもそも派遣法の目的とは?

 労働者派遣法には、「この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。」と定められています。

 派遣労働という言葉は今では当たり前のように聞かれますが、1986年に労働者派遣法が施行されるまでは「職業安定法」によって派遣労働は禁止されていました。制定時は専門技能を有するソフトウェア開発、事務機器操作、通訳、翻訳、速記など13業務が限定的に容認されるという内容でしたが、1999年に対象業務が原則自由化され、2003年には製造業務への派遣が解禁されるなど派遣労働の対象が拡大しました。

 厚生労働省によると、2013年時点で252万人と報告されており、派遣労働者など非正規社員と正規社員の格差が問題視され、待遇均等化や派遣労働社員から正社員化へのキャリアアップや教育訓練の制度化の必要性が叫ばれています。

厚生労働省が入居する合同庁舎

厚生労働省が入居する合同庁舎

 このような背景から派遣労働者の雇用安定化や待遇改善を図るため労働者派遣法は改正されました。改正派遣法によってこれらの課題は解決されるのでしょうか?改正のポイントについて簡単に紹介します。

1.労働者派遣事業の許可制への一本化

 改正前は特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業者に区別されており、特定事業者は届出制、一般事業者は許可制だったが、改正後は全ての事業者が許可制になり、新たな許可基準を設ける。

2.労働者派遣の期間制限の見直し

 改正前は26の専門業務で期間制限を設けなかったが、改正後は全ての業務で期間制限を設ける。事業者単位では3年が上限で契約期間終了後、労働組合の意見を聴取した場合に他の派遣労働者を雇うことが可能。人単位では3年が上限で契約期間終了後は労働組合の意見を聴取した場合に別の事業所で働く事が可能。

3.キャリアアップ措置

 改正後は派遣元事業者に教育訓練制度を備え、希望する派遣労働者に対してキャリア支援を義務づける。契約期間終了後は派遣元事業者から派遣先事業者へ派遣労働者の正社員化を依頼。派遣元事業者での無期限雇用、他の派遣先の紹介などを義務づける。

4.均衡待遇の推進

 派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇均衡を図るため、派遣元事業主と派遣先にそれぞれ新たな責務が課される。

5.労働契約申し込み“みなし制度”

 派遣先事業者は指定の違法派遣を受け入れた場合その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなす。

雇用の安定化か、生涯派遣か

 与党側は改正により安定雇用が実現されると主張していますが、派遣労働者には派遣元事業者や派遣先事業者への就職だけではなく、他の仕事へ転職する選択肢も必要です。派遣元事業者が派遣労働者と派遣先事業者の間に入って転職活動の支援をする効果的なキャリア支援を期待したいところです。

 一方、野党側は「一生涯派遣が続く」など懐疑的な見方をしています。今回の期間制限の見直しは、契約期間3年が過ぎても労働組合の意見を聴取すれば派遣労働の延長が可能とされており、実質的に派遣労働が長期化して安定雇用には繋がらないという意見です。また通常であれば法案成立から施行までの間、パブリックコメントを原則30日間受け付ける所を、今回はわずか3日で受付を閉め切った事を批判しています。

 新制度のもと派遣労働者の安定雇用と待遇均等化が図られているか効果測定を行い、検証と改善を重ねていくことが必要です。

参照:厚生労働省ホームページ平成27年労働者派遣法改正法の概要(PDFファイル)

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