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第8回マニフェスト大賞

大学との連携による議会からの政策提案について~大津市議会事務局の視点から~ (2013/11/22 大津市議会事務局 議会総務課課長 清水 克士 氏)

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 地方自治体の首長・議会の先進的な取り組みや、地域主権を支える市民の活動を表彰する「第8回マニフェスト大賞」のグランプリと各最優秀賞の発表が11月1日、東京・港区の六本木アカデミーヒルズで行われ、8部門16作品が表彰されました。 政治山では受賞された皆様から、取り組みの概要や経緯、今後の展望などを寄稿いただきます。今回はマニフェスト大賞(議会)グランプリを受賞された大津市議会の「大学との連携による議会からの政策提案について」をご紹介します。素早い条例制定には、会派を越えた議員間の議論と議会事務局との協働、そして積極的に専門家に助言を求める体制作りが重要です。一筋縄ではいかない体制作りの中で直面した難問を、どのように克服して実現に至ったのでしょうか。

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 大津市議会が議会グランプリをいただいた「大学との連携による議会からの政策提案について」、その実務を担った事務局の視点からの私見です。

取り組みの概要

 大津市議会では、2011(平成23)年1月に、議会からの条例提案や政策提言を行うためのスキームとして「政策検討会議」を創設しました。

政策検討会議風景

政策検討会議風景

 これは、議会からの政策提案について、具体的なテーマを提案した会派から座長を選出して議論をリードし、全会派から当該テーマに詳しい議員をメンバーとして選出することによって、より深い議論が、機動的に行えるよう制度設計したものです。

 しかしながら、行政のさまざまな分野における政策提案を、執行部に頼らず純粋に議会から行うに当たっては、有識者の助言が必要不可欠と思われました。そのため、専門的知見を外部に求める手法として、2011年11月に、市内にも立地する龍谷大学と「パートナーシップ協定」と称する地域連携協定を、議会独自に締結することによって、包括的な協力関係を構築したものです。

 そして、2013年2月に「大津市子どものいじめの防止に関する条例」を制定し、本市のいじめ再発防止施策の礎になったことなど、多くの成果を得たものであります。

直面する課題

 しかし、大学との連携については、属人的要素が大きく、政策課題の解決に最適な研究者といかにして巡り合うかが、直面する課題としてあります。具体的には、公表されている研究者の専門分野と政策課題が単純に合致していればうまくいくというものでは決してなく、個人的人脈や知識に頼っているのが現状であるからです。本質的には、議会と大学のニーズをマッチングするコーディネーターの配置など、制度的対応を考えるべきですが、すぐに実現することは困難です。よって、抜本的な対応策ではありませんが、当面は連携する大学を増やし、選択肢を拡大することによって、マッチングのヒット率を高めようとしているところです。

大津市と龍谷大学とのパートナーシップ協定締結式

大津市と龍谷大学とのパートナーシップ協定締結式

 また、政策検討会議についても、任意の会議ではありますが職員が事務局を担当し、講師謝礼などを公費支出することを考えると、要綱設置ではなく、議長告示以上に設置根拠を置き、公式会議と位置付ける必要性があると考えているところです。

 これについては、大津市議会においては議会基本条例制定の前段階として、議決を求めるべき事項や住民の直接請求権の対象とすべき事項については「会議条例」に、議決を求めるまでもない事項や先例、申し合わせ事項については「会議規程」に統合する形で、「会議規則」を分離する例規整備を検討しており、「政策検討会議」も「会議規程」に明記する形での、公式会議化を図ろうとしているところです。

今後の展望

 いずれにしても、こうした新しい取り組みに関しては、できない理由を並べることは簡単で、やりたくない人を説得することは常に難しく、また、実施段階にこぎつけても試行錯誤の連続であり、当然、失敗もあります。

 しかしながら、事務局提案の新たな試みが失敗しても、それを許容する度量の広さが、大津市議会議員の皆さんにはあります。その意味でも、今回の議会グランプリ受賞は、具体的な成果内容そのものよりも、議員間でも会派を越えて議論できる関係性や議員と事務局のチームワークが、結果として高く評価されたものと感じており、歴代正副議長、議会運営委員会委員長のリーダーシップと議員各位の実行力に敬意を表するとともに、深く感謝する次第です。

 そして、マニフェスト大賞研修会や授賞式で、「施策に著作権はなく、優れたものはどんどんマネをしていくべき」との講評がありましたが、議員と事務局の関係性やチームワークは容易にコピーできるものではなく、それこそが大津市議会の強みと自負しているところです。事務局職員としても、この良好な環境を活かし、北川正恭審査委員長の講評にもあったとおり、ルーティンワークをこなすだけの「議会事務局」ではなく、常にチャレンジを続ける「議会局」を目指して、今後の議会改革を支えていきます。

大津市議会(2013.12.19撮影)

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