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【フィスコ・コラム】石油生産調整は「3度目の正直」か  株式会社フィスコ 2016年9月19日

関連ワード : 環境・エネルギー 金融経済 

世界的な供給過剰問題の解消に向け、今月末開催の石油輸出国機構(OPEC)非公式会合では主要産油国による生産調整の協議に注目が集まっています。原油安是正に向けた会合は2016年に入り4月と6月に行われましたが、産油国間の利害対立からいずれも合意が見送られ、原油価格は低迷が続いています。今回は3回目となりますが、目論見通りに議論は進むでしょうか。

原油価格の指標となるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は、2014年には1バレル=100ドルを超えていましたが、2014年夏から2015年にかけて急落します。それでも2015年5-6月は60ドルを上回っていました。2016年は36ドル台でスタートしたものの、2月には26ドル台まで下落。2003年以来、実に13年ぶりとなる低水準での推移が続いた後はやや持ち直し、6月に節目の50ドルを回復しました。しかし、それが頭打ちとなり、8月には再び40ドルを割り込みました。現在も40ドル台と、さえない値動きが続いています。

春先にOPEC加盟国や非加盟18カ国が原油価格の下落に歯止めをかけようと、サウジ、ロシア、カタール、ベネズエラの4カ国が増産の凍結に暫定合意しました。ただ、4月17日には主要産油国はカタールの首都ドーハで増産の凍結を目指し原油市場安定化に向けた会合を開きましたが、経済制裁を解除されたばかりのイランが拒否。このため、生産調整に関する議論は6月2日のウィーンでのOPEC総会に持ち越されました。しかし、このOPEC総会でも需給改善に向け各国の歩調は合わず、物別れに終わりました。供給過剰懸念は再浮上しており、目先は下落に向かう可能性があります。

今回の非公式会合では、OPECの盟主であるサウジアラビアと非加盟国のロシアが主導し「現行水準での増産凍結ではなく、参加各国の産油量が一定の上限を超えないようにすることで合意する道筋を検討している」と通信社は伝えています。これまで増産凍結に否定的なイランなどの合意を取り付けるため、上限を設定しながらも増産計画の実施を容認する案が検討されているようです。しかし、米国との国交回復を果たし石油輸出で経済成長に弾みをつけたいイラン、政策の手詰まりで結局は原油頼みの経済情勢が続くロシア、さらには価格設定権を確実なものにしたいOPECの3者の利害は一致するでしょうか。

一方、原油価格の回復には供給サイドと需要サイドの双方の問題が解決しないと、持続は困難ですが、需要サイドの問題点も解決に向かっているとは思えません。エネルギー消費大国の中国の経済に明るさが戻っていないことが最大の要因です。中国経済の減速は織り込み済みで、最近発表された経済指標が予想の範囲内のため「まずまず」と市場では受け止められています。しかし、経済の不透明感は払しょくされていない状況ではないでしょうか。

ただ、今回産油国による生産調整の協議が決裂しても、原油価格はそれほど下げずに済むかもしれません。4月のドーハ会合後、供給過剰問題が何も解決していないのに原油価格は持ち直していきました。連邦準備制度理事会(FRB)による利上げと日銀による追加金融緩和がともに見送られ、ドルが相対的に弱まったことで割安感から原油に買いが入ったためです。これをきっかけにWTIは2月の26ドル台から2倍近い水準に切り返しました。今回も米早期利上げ観測は遠のき、ドルの下落観測から原油の下値をサポートする可能性はあります。「火に油」は避けられそうです。

<MT>

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