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【龍馬プロジェクトリレーコラム】

第52回 どんな基準で投票する議員を決めていますか? (2015/4/17 小林貴虎/龍馬プロジェクト)

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「地方から日本を変える」を合言葉に、日本全国の国会議員や地方議員などが超党派で集まった『龍馬プロジェクト』。政治山では、龍馬プロジェクトの思いに賛同した若手議員によるリレーコラムを連載しています。津市議会議員で龍馬プロジェクトの小林貴虎氏による「どんな基準で投票する議員を決めていますか?」をお届けします。

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 どんな基準で投票する議員を決めていますか?

 若いから?なんかやってくれそうだから?あるいは知り合いからパンフをもらった人だから?いやそもそも何十人もいて訳分かんないから(投票に)行かない?

 一方で年配の人たちは結構明確な市議会議員の評価基準を持っています。彼らのいう「仕事ができる議員」は、道路を直してくれた人、水路を新しくしてくれた人、カーブミラーをつけてくれた人。でも議員は実は決定権を持っていません。決めるのは職員。決済を下ろすのは最終的には市長。つまり議員は口添えをしたか、ごり押しをしたか、その手段はいろいろです。

 古い話をしましょう。議員や議会の権限や地方自治体の設置目的等を定めた地方自治法というものがあります。これは1947(昭和22)年にできました。戦争で多くの国土が焼失して国民の生活が疲弊していた時です。国が予算を付けて地方がそれを執行するというやり方が、このとき作られました。住む地域によって差ができては困ります。全国どこに行っても国民が安心して生活できる環境を整えることが最重要課題でした。地域の独自性などという考え方は全く必要のない時代です。

 議会には可決するか否決するかの権限が与えられていますが、下りてきた予算を否決する理由はありません。可否を決める権限は形がい化していきます。

 自治体が決めることは「予算で何をするか」ではなく「予算をどこに充てるか」でした。そして普段から決定権を持つ市長や職員と接点が多い議員が、この決定に介入していきます。これが口利きです。

 国全体が経済的に成長しているときはどんどん予算が下りて来ました。職員も要望が多いところ、働きかけが強いところから予算を充てようと考えるようになります。口利きは要望の強さをはかる材料の1つだったのです。ですから当時を知る人たちにとって、「仕事ができる議員」は確かに正当な評価基準でした。

 さて、いくらか回復の兆しが見えてきたとはいえ、いまだ日本経済は長いデフレ時代から完全に脱却しておりません。人口が減る一方で社会福祉にかかる支出が膨れ上がっています。過去のようにあれにもこれにも予算を付けるということが難しくなりました。自治体は優先順位ではなく、取捨の選択をしなければならなくなりました。できないことにはできないと言わなければならなくなりました。簡単に議員の口添えに対応することができなくなりました。

 それでも議員は自らの評価を守るため、支援者から受けた要望を実現せねばなりません。議員はどんどん高圧的になり職員は逃げ道を模索するようになる。苦悩の日々の到来です。

 予算が減ったからできることが少なくなったというのではあまりにも単純です。当然やりくりをする必要が出てきます。限られた財源の中でうまくやっていく方法を考える技量が求められるようになってきました。いろいろアイデアを出して今までと違ったことをしようとすると、それまで「全国どこでも同じように」という考え方で作られたさまざまな法律が邪魔になってきます。規制緩和の出発です。

 また経済施策も同様に全国一律ではうまく行かなくなりました。それぞれの地域がその特色や地の利を活かして地域の経済発展を作り出していく必要性が出てきました。いよいよ地域ごとの独創的なアイデアや斬新な取り組みが求められるようになってきます。

 経済施策に成功した地域はより自由に予算が組めるようになり、独自の福祉施策や教育施策ができるようになります。自治体間の競争は必然的に生まれてきた状況でした。国は今それを後押ししようとしています。

 東京一極集中の是正は言い換えるなら、UJIターンの獲得合戦そのものです。移住してもらえるよう、より良い街を作らねばなりません。うまくPRすることも必要です。さらに今以上に拡大されるふるさと納税制度も同じです。魅力のある商品を提供できる自治体には寄附が集まり、提供できない自治体は税収が減ります。また現在進められている「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中の政策5原則には「地方が自主的かつ主体的に、夢を持って前向きに取り組むことを支援する施策に重点を置く」と書かれています。

 自治体の考え方や取り組みの差が、自治体間の格差を広げることになるでしょう。

 激化する自治体の生き残り合戦をいかに乗り切るか。同族企業の創業者のように、カリズマティックなスーパー市長のたぐいまれなるリーダーシップによって乗り切るのも1つでしょう。あるいはアメリカ映画に出てくる大会社の取締役会のように建設的な議論を戦わせ、さまざまな独創的なアイデアを形にしていく組織として議会を刷新するのも有効な手段かもしれません。

 建設的な議論ができる議会に必要なのは、街全体を包括的にとらえることができる議員。街の持っている特色も欠点も客観的にとらえることのできる目を持った議員。自分ならこうするというアイデアを持っていたり、明確な未来のビジョンを掲げることのできる議員ではないでしょうか。

 時代の移り変わりと共に、議員に求められることも随分変化してきました。

 そして議員を選ぶ権限を持っているのは有権者の皆さんです。

小林貴虎著者プロフィール
小林 貴虎(こばやし たかとら)
1974年1月4日、三重県津市生まれ。
藤堂高虎公にあやかり貴虎と名付けられる。
三重県立津高等学校 ラグビー部OB、帝京科学大学 情報科学科、インディアナ大学・パデュー大学共同インディアナポリス校 修士課程1年半在籍、2期修了。
NGOにて5年間のボランティア活動に従事し、2005年帰郷。父の会社にて就業すると共にフリーランスで日英同時通訳、2009年より地域に根ざした奉仕活動を始める。
2011年三重県津市議会議員初当選、現在2期目
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