第123回 一般質問からの政策実現は可能なのか?~会派要望と一般質問~  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第123回 一般質問からの政策実現は可能なのか?~会派要望と一般質問~ (2015/2/18 愛知県東浦町議会議員 成瀬多可子/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第123回は、愛知県東浦町議会議員の成瀬多可子氏による「一般質問からの政策実現は可能なのか?~会派要望と一般質問~」をお届けします。

人口5万人の「町」の議会

 愛知県知多郡東浦町は名古屋市の南約30キロに位置する、知多半島の根っこのところにある気候温暖で緑豊かなのどかな町です。2011年夏の選挙で32年ぶりに町長が交代しました。それまで圧倒的多数のいわゆる与党会派によって町長とともに歩んできた議会も、変革の時を迎えています。

 わが東浦町議会は定数18人で、会派制をとっています。わたしは議員になって最初の1年半は他の議員と組むことなく、「一人会派」として活動しました。今期、多い時で最多5人が一人会派の状態でしたが、現在一人会派は2人、わたしは5人で会派を組んで活動しています。

 1人と5人、違いはいろいろあり、それぞれ学ぶところがあります。

 会派を組んで活動してみて、もやもやしていることのひとつに「会派要望」というものがあります。頭から否定するつもりではありません。よく分からないのです。

議員にとっての「要望書」とは?

 議員には本会議で一般質問の時間が与えられています。東浦町議会の場合、年4回の定例会ごとに所属会派を問わず一議員あたり答弁込みで60分、年間240分の時間が保障されています。政策提言ならこの時間が使え、回答も得られます。政策提言まで練り上げられていなくても、「この問題についての見解は?」とただすことだってできます。その時間が、5人の会派なら年間で計20時間使えるということになります。議会での一般質問はどの議員が何を質問し、当局のどこが何と答えたかは一言一句漏らさず記録され、当局には答えたことに対しての責任が発生します。

 行政に言いたいことがありすぎて、一般質問の時間だけでは到底足りないので要望書を出す、という声も他市町の議会から聞くところではあります。しかし、議員という立場でなければできない「議会での一般質問」をフル活用せずに、議場の外で会派要望だけを出すようなやり方をしている議員がいるとすれば、何のために議員をしているのかと問いたくなります。

当局にとっての「要望書」とは?

 要望書を出されれば、当局は受け取り、「回答を望む」と書かれていれば回答するでしょう。しかし会派からのものであれ住民からのものであれ、回答するかしないかも当局判断、法的拘束力はありません。

 いつだったか、会派要望についてどう思うか、とある職員に尋ねたことがあります。「条例や予算を最終的に決定するのが議会であるという性質上、大きい会派ほど前もって求める方向性などが分っていれば、その方がやりやすい。会派要望とはそのためのツールというふうにとらえている。議会ではすんなり通してくれた方が、当局にとっては楽であることは事実」と返ってきました。正直な答えでしょう。でも、それで物事が決まってしまってはいけないと思うのです。

 議案として表に出る前に水面下で話が出来上がってしまい、議員としても「出していた要望通りになった」と一見ハッピーエンドのようにも見えますが…。

記録に残り表に出る「一般質問」と表に出ない「会派要望」

 わたしがもやもやするのは、表での仕事では何も動かず、表に出ないところでことが動いていくのかというところなのです。もっとも住民の関心は、どこで決まっていくのかよりも、町がどう良くなっていくのかの方にあるのでしょうが。

 一議員の立場で一般質問しただけでは当局は動かない、だから複数の議員からなる会派としての要望書で、と口にする議員がいます。良い答弁が引き出せないのは、当局が議員一人を軽んじているからではなくて、目の付け所も含め、議員の力が足りないからではないでしょうか。わが町の課題抽出と政策の研究とともに一般質問のやり方、技術的なことも私たち議員はレベルアップに努めなければいけません。

 この町を良くしたい、という気持ちは議会も当局も同じなのですから、必要な政策、良い提言だったら遅かれ早かれ実現するはずです。

 改選後、今年5月からは定数2減がすでに決まっており、全員で16人の地方議会での会派制の意義も考える時期がきていると、わたしは捉えています。会派制の存続いかんによっては、会派要望というものもどうなるのか。常任委員会単位、あるいは政策ごとのユニットを組んで調査研究、提言していくという形に変わっていくのでしょうか。そうなれば大いに面白いことになると、実は少々期待もしているところです。

成瀬多可子著者プロフィール
成瀬多可子(なるせ たかこ) 東浦町議会議員
愛知淑徳短大卒。市制移行の説明会などで感じた行政への違和感から議会に興味を持ち、2011年春の町議会選挙に無所属で立候補、同年7月に繰り上げ当選を果たす。Yes、Noだけではない、住民目線で提案していける議会を目指し、政策や議会のあり方の学びを続けている。議会改革特別委員会では副委員長を務め、グループ討議やホワイトボード導入を試みるなどしている。
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