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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第98回 ICT活用で行政サービスの効率化と生産力の向上を (2014/8/13 神奈川県議会議員 中谷一馬氏/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第98回は、神奈川県議会議員の中谷一馬氏による「ICT活用で行政サービスの効率化と生産力の向上を」をお届けします。

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 財政状況の好転が見込めない中で、行政サービスの質を低下させずにどのように効率化するかが、どの自治体でも求められています。そこで、神奈川県議会で提案し動きだした「ICT(情報通信技術)活用による業務全般の効率化とスマート化による生産力の向上」という次世代型の政策について、今回は書かせていただきます。日本が今後世界で生き抜くにあたって非常に重要な観点だと思いますし、他の自治体でも参考になれば幸いです。

行政事業のコンビニエンス化

 総務省の2012年の統計によれば、有線系ブロードバンド契約合計が3,530万件に対して、モバイルなどの無線系の契約合計は4,344万件であり、2014年の世界市場における端末の出荷台数も、スマートフォンやタブレットといったモバイルが14億台であるのに対し、パソコンは3億台と予測されています。今、モバイルからのネットアクセスが主流となる方向に急速に動いています。そうした中で、初めに「電子行政サービスシステムの構築について」お話をさせていただきます。

 電子行政サービスシステムの構築とは、要するに行政事業のコンビニエンス化です。例えば、皆様が住民票の取得や税金納付などの各種手続きが、すべて自分自身の携帯電話やスマートフォンからいつでも・どこでもできるようになれば、どんなに生活は便利になることでしょう。決まった時間に役所に行く時間が省けて、行政側も窓口業務がなくなることから、効率化した人件費を他の必要としている部署に効果的に配分することができるようになります。

 このように、行政でもポータルサイトやスマートフォンなどから行政手続きをオンラインで済ませることができれば、住民の方が何度も窓口に足を運ぶ手間がなくなり、時間短縮や負担する費用が軽減できるなど県民の利便性は飛躍的に高くなることから、電子行政サービスシステムを構築するため、具体的な取り組みを進めていくべきであると考えます。

 電子行政サービスシステムの積極的な活用事例として、例えば韓国では、スマートフォンなどを通してさまざまな電子行政サービスを提供しており、証明書の発行のみならず、政府・自治体の行政手続きのほとんどをネット経由で済ませることができるポータルサイトが存在しております。

 韓国の電子行政サービスアプリ「民願」は、利用対象は韓国国民全員で、サービス内容は国交省関係の自動車関連、自治体関係の住民票、法務省関係の戸籍等の証明書(英文含む)、婚姻関係の証明書、不動産登記などの不動産関連、文部省関係の大学、高校、大学院関連の卒業証明や成績証明、在職証明の英文と国文証明書、外務省関係の出入国事実証明書、警察庁関係の犯罪経歴等々、証明書を住所など関係なく、スマートフォンアプリで申請することができるそうです。

 ほかにも住所移転の手続きと同時に郵便局、銀行、税務、学校の編入の手続きまで一括して済ませることができ、医療機関や年金保険者については情報ネットワークが構築されていて、住民は保険証などを持たずに病院で診察が受けられます。

 こういったシステム開発は日本でも技術的には何ら問題なく、実現できるはずなのですが、現状では次世代モデルと位置付けられ、まだ検討が進んでいない状況にあるように感じます。

 神奈川県職員採用試験申し込みや情報公開請求等については、電子行政サービスが実現されておりますが、このほかにも、窓口対応している申請、届出や県税の納付をはじめとした県管轄のさまざまな手続きについても、このような電子行政サービスシステムの構築が実現されたなら、県民の利便性は飛躍的に高くなるものと考えますので、実現に向けて具体的な取り組みを進めていくべきであると考えます。

 行政ポータルサイトやスマートフォンなどから申請、届出や証明書の発行など行政手続きのほとんどをオンラインで済ませることができる電子行政サービスシステムを構築することは県民にとって非常に有益であると考えますので、引き続き具体的な取り組みを進めていきたいと思います。

モバイルを行政に活用する

 次に、「モバイルワークの推進について」お話をさせて頂きます。

 昨今、ICT関連の中で多用されるスマートとは、一般的にSeamless(縫い目のない)、Mobile(携帯)、Anytime(いつでも)、Real time(即時に)、Together(共に)の頭文字をとってSMARTと表現されることが多いわけですが、国内外での状況を考えれば、その中でもモバイルが非常に重要です。スマートフォンやタブレット型端末といった携帯型情報端末、いわゆるモバイルを行政に活用することは、最新のICT活用により仕事のやり方を徹底的に見直すものであり、県民の利便性やサービスの向上につながることから、行政でもモバイルを積極的に導入し、活用を進めていく必要があります。

 モバイルの活用の一例として佐賀県では、「モバイルワーク推進実証事業」を開始しております。私も先日佐賀県庁を訪問し、同県最高情報総括監(CIO)である森本登志男氏から直接話を伺ってまいりました。この取り組みは、少子高齢化社会を迎え、生産人口が介護現場に取られるなどの影響が想定される中、将来的な仕事のあり方として、タブレット端末や仮想デスクトップ、クラウドなどを活用して、職員が出張先や自宅などから、職場の自席にいるときと同じようにいつでもどこでも同じように仕事ができる環境を整備するものであり、プレゼンテーションの品質の向上、各種審査・検査業務の効率化、迅速な情報の伝達・共有などの抜本的な業務改革に努めるものです。

 例えば、マイクロソフト社のofficeではいつでもどこでも仕事ができる環境がハード面、ソフト面ともに整備されており、モバイルを活用した社内外のファイル共有や業務実施を実現するツールが活用されています。

 モバイルの活用により、レスポンスタイムが短くなり、1人ひとりが抱えられる業務が多くなれば、業務の効率化や県民の利便性が高くなるとともに、生産性が向上するという素晴らしい好循環が生まれるものと考えます。この取り組みにより例えば、神奈川県庁職員が、週に1回たった1人1時間残業時間を短縮できたとすれば、私の試算では人件費を年間約3億5,875万円程度削減することが可能となると見込んでおります。

 こうした観点から行政においても、より積極的にモバイルワークの実現に向けて具体的な取り組みを進めるべきであると考えます。

 住民の利便性を高めるとともに、業務面での効率化や生産性の向上を図ることが期待できるモバイルワークを推進することは非常に有用でありますので、情報インフラの整備を初めとした具体的な実現に向けた取り組みをしっかりと進めてまいります。

行政と住民の間の新しい取り組み

 次は「ガバメント2.0の具体的な推進について」です。

 今回提案するガバメント2.0とはICTを使って、従来のように行政自らが公共サービスを提供するだけではなく、住民に、行政が行う公共サービスや政策決定に主体的に参加してもらい、その英知を集結させて、さまざまな施策を実現させようという行政と住民の間の新しい取り組みです。

 その実現には、行政の持っている情報を住民に積極的に提供することと、住民が提供された情報を活用し、容易に行政に参加できる仕組みを整えることが必要であり、最新のICT技術を活用することで、行政と県民との距離が身近となる神奈川を実現することが可能となります。

 例えば、アメリカのオバマ政権ではオンラインで国民からの請願を受け付ける「We The People」というサイトを活用しております。これは、30日で10万筆の署名を集めたら、公的に政府の担当者から必ず対応してもらえるというもので、既に900万人もの方に利用されており、ホワイトハウスと国民との間をつなぐ新たな政治参加手段のひとつとして定着しております。

 こうした中、日本でもガバメント2.0を実現するためのツールが存在しており、例として、世界最大のオンライン署名サイト「Change.org」があります。このサービスは無料で利用可能であり、「We The People」と同じ性能のものを低コストで作成することができることから、すでに海外でも利用が進んでおります。

 また、公共サービスに市民の手を借りるため、千葉市では「Fix My Street」と同様なICTの仕組みの活用の検討を、韓国では「生活不便スマートフォン通報」というアプリケーションの活用を始めました。これは、道路施設の破損や不法投棄、違法駐車などに気づいた市民がアプリケーションを使用してオンラインで行政に報告し、行政はそれを見て必要な対応を行うという「市民にお手伝いをいただく行政システム」です。

 従来のやり方であれば、「街灯が切れているから取り替えてほしい」「駐車禁止の区域に車が止まっているからどかせてほしい」など、行政に直接電話や訪問するなどして対応を要請していました。しかし、このアプリを利用することで携帯電話から写真と位置情報を知らせることができ、さらに行政は全部自前で対応するのではなく、登録住民に修理などの対応を依頼したり、ボランティアの方々を活用したりして課題を解決していくことが可能となります。

 これまで行政が市民の意向を聞くためには、タウン・ミーティングなどを開催したり、アンケート調査を行ったりするなど、人件費や諸費用がかかっていましたが、こうしたアプリを活用することで業務効率の改善による経費削減が見込め、韓国の事例では平均1.5日程度の業務処理時間の短縮と、年間約3億5,000万円の費用節約が実現できたそうです。

 さらに、福井県鯖江市では「データシティ鯖江」として電子行政の推進に取り組んでおり、2013年は“オープンガバメントサミット2013”を開催するなど積極的な取り組みを進めていたり、横浜市では、公民連携プロジェクト「YOKOHAMA Ups!(ヨコハマアップス)」を始動させ、モバイルアプリコンテストを行っていたりするなど、民間の活力を活かした共創連携を図り、市民生活を向上させることを目指しています。

 行政と住民とが協力していく中で、自助・共助・公助の意識を高め、誰かに任せる政治から、自分たちで創る政治を実現していこうという理念を持って、民主主義の根本概念を進化させていくことがまさにガバメント2.0の意義であり、醍醐味です。

 こうした観点から、ガバメント2.0を実現するためのアプリケーション活用を具体的に行うことにより、行政と県民との距離を縮め、県民の多くの声を県政に反映させることで、県民の力を生かした行政サービスを実現すべきであると考えます。

 私からの政策提案がきっかけとなり神奈川県では「電子化全開宣言行動計画」が2014年2月に策定されました。実現するための予算も2014年度予算に盛り込まれています。

 今後も行政に多くの住民の声を反映し、また、住民の力を生かした行政サービスを実現するため、行政と行政双方の協力体制構築の一環として、民間の力も活用しながら、ガバメント2.0を推進するアプリケーションの導入をしっかりと推進していきます。

中谷一馬氏著者プロフィール
中谷一馬(なかたに・かずま) 神奈川議会議員 民主党 神奈川七区(横浜市港北区・都筑区)総支部長代行
1983年8月30日生まれ。母子家庭で育つ。厳しい経済環境で育ったことから、自立に焦り、中学卒業後高校には進学せず社会に出るがうまくいかず、同じような思いを持った仲間たちとグループを形成し代表格となる。しかし「何か違う」と高校に復学し、卒業後、呉竹鍼灸柔整専門学校を経て、慶應義塾大学に進学。その後、企業経営などを経て、政界進出を決意。2011年統一地方選挙にて27歳で初当選し、神奈川県議会での史上最年少議員となる。その後、World Economic Forum(通称:ダボス会議)のGlobal Shapers2011に地方議員として史上初選出され20代の日本代表メンバーとして活動。また2012年には第7回マニフェスト大賞にてその年に一番優れた政策を提言した議員に贈られる最優秀政策提言賞を受賞。さらに、民主党内では地方議員初の民主党本部役員である青年委員会の副委員長(民主党本部 最年少役員)務めるなど、多方面で活動中。
HP:中谷一馬 オフィシャルウェブサイト
ブログ:中谷一馬オフィシャルブログ「おもしろき こともなき世を おもしろく」
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